易経 / 繋辞下
上古結繩而治,後世聖人易之以書契,百官以治,萬民以察,蓋取諸夬。是故,易者,象也,象也者像也。彖者,材也,爻也者,效天下之動者也。是故,吉凶生,而悔吝著也。陽卦多陰,陰卦多陽,其故何也?陽卦奇,陰卦偶。其德行何也?陽一君而二民,君子之道也。陰二君而一民,小人之道也。
新字:上古結繩而治,後世聖人易之以書契,百官以治,万民以察,蓋取諸夬。是故,易者,象也,象也者像也。彖者,材也,爻也者,効天下之動者也。是故,吉凶生,而悔吝著也。陽卦多陰,陰卦多陽,其故何也?陽卦奇,陰卦偶。其徳行何也?陽一君而二民,君子之道也。陰二君而一民,小人之道也。
書き下し
上古は縄を結びて治む。後世の聖人、之に易うるに書契を以てし、百官以て治まり、万民以て察かなり。蓋し諸を夬に取る。是の故に、易なる者は象なり。象なる者は像なり。彖なる者は材なり。爻なる者は天下の動に效う者なり。是の故に吉凶生じて、悔吝著る。陽卦は陰多く、陰卦は陽多し。其の故は何ぞや。陽卦は奇にして、陰卦は偶なればなり。其の徳行は何ぞや。陽は一君にして二民、君子の道なり。陰は二君にして一民、小人の道なり。
現代語訳
大昔は縄を結んで事を記し、政を行っていた。後世の聖人はこれを改めて文字と契約書を用いるようにし、多くの役人がそれによって職務を治め、万民がそれによって物事をはっきり知ることができた。これはおそらく夬の卦から取ったものであろう。そもそも易とは象である。象とはかたどることである。彖とは卦全体の素材を判ずる言葉であり、爻とは天下の動きにならったものである。だからこそ吉凶が生じ、悔いや恥もはっきりとあらわれる。陽の卦には陰の爻が多く、陰の卦には陽の爻が多い。それはなぜか。陽の卦は奇数、陰の卦は偶数だからである。その徳のありようはどうか。陽は一人の君に二人の民であり、これは君子の道である。陰は二人の君に一人の民であり、これは小人の道である。
解説
前半は文字の誕生です。結んだ縄で覚えていた時代から、文字と契約書を用いる時代へ。役人は職務を果たせるようになり、民は物事をはっきり知ることができるようになったといいます。記録し、明文化することが、統治の透明さを生んだという指摘です。後半は易の構造そのものの説明に移ります。易とは象であり、象とはかたどること。彖は卦全体を判じ、爻は天下の動きをまねる。そのうえで、陽の卦と陰の卦の性質が語られます。陽の卦は一人の君に二人の民、すなわち中心が一つに定まっているから君子の道。陰の卦は二人の君に一人の民、すなわち中心が二つに割れているから小人の道だと。組織で考えるとよくわかります。指示系統が一本に通っていれば、人は迷わず動けます。二人の上司が別々のことを言えば、現場は割れ、力は分散する。方針を一つに定め、文字にして誰もが読めるようにしておく。この一段は、記録と統一という組織運営の基本を示しています。