易経 / 繋辞下
刳木為舟,剡木為楫,舟楫之利,以濟不通,致遠以利天下,蓋取諸渙。服牛乘馬,引重致遠,以利天下,蓋取諸隨。重門擊柝,以待暴客,蓋取諸豫。斷木為杵,掘地為臼,臼杵之利,萬民以濟,蓋取諸小過。
新字:刳木為舟,剡木為楫,舟楫之利,以済不通,致遠以利天下,蓋取諸渙。服牛乗馬,引重致遠,以利天下,蓋取諸随。重門撃柝,以待暴客,蓋取諸予。断木為杵,掘地為臼,臼杵之利,万民以済,蓋取諸小過。
書き下し
木を刳りて舟と為し、木を剡りて楫と為す。舟楫の利、以て通ぜざるを済い、遠きを致して以て天下を利す。蓋し諸を渙に取る。牛を服し馬に乗り、重きを引き遠きを致して、以て天下を利す。蓋し諸を随に取る。門を重ねて柝を撃ち、以て暴客を待つ。蓋し諸を予に取る。木を断ちて杵と為し、地を掘りて臼と為す。臼杵の利、万民以て済う。蓋し諸を小過に取る。
現代語訳
木をくりぬいて舟をつくり、木を削って櫂をつくった。舟と櫂の利便によって、行き来のできなかったところを渡れるようにし、遠くまで届かせて天下を豊かにした。これはおそらく渙の卦から取ったものであろう。牛を馴らし馬に乗り、重い荷を引き遠方まで運んで、天下を豊かにした。これはおそらく随の卦から取ったものであろう。門を幾重にも設け、拍子木を打って夜回りをし、乱暴者の来襲に備えた。これはおそらく予の卦から取ったものであろう。木を切って杵をつくり、地を掘って臼をつくった。臼と杵の利便によって、万民が助けられた。これはおそらく小過の卦から取ったものであろう。
解説
舟と櫂、牛馬による運搬、門と夜回り、臼と杵。この一段に並ぶのは、いずれも暮らしを支える基礎的な道具です。それぞれが渙・随・予・小過という卦の象から生まれたと語られます。渙は水の上を散り行くかたち、随は従い動くかたち、予はあらかじめ備えるかたち、小過は小さなものが少し過ぎるかたち。抽象的な型が、具体的な発明へと翻訳されていく様子が示されています。ここから読み取れるのは、易が単なる占いの書ではなく、世界の型を捉える枠組みとして受け止められてきたということです。とりわけ「予」から夜回りの備えが生まれたという一節は示唆に富みます。予とはあらかじめ用意することであり、危険が起きてから慌てるのではなく、起きる前に構えを整えるという発想です。仕事でいえば、事故や離職やクレームは、起きる前の仕組みで決まります。備えを面倒がらず、日常に組み込んでおくこと。それが天下を利する道具の考え方です。
この章句が説くこと
舟楫予と備え道具の起源卦象
関連する章句
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