易経 / 繋辞上
「同人,先號咷而後笑。」子曰:「君子之道,或出或處,或默或語,二人同心,其利斷金。同心之言,其臭如蘭。」「初六,藉用白茅,无咎。」子曰:「苟錯諸地而可矣。藉之用茅,何咎之有?慎之至也。夫茅之為物薄,而用可重也。慎斯術也以往,其无所失矣。」
新字:「同人,先号咷而後笑。」子曰:「君子之道,或出或処,或黙或語,二人同心,其利断金。同心之言,其臭如蘭。」「初六,藉用白茅,无咎。」子曰:「苟錯諸地而可矣。藉之用茅,何咎之有?慎之至也。夫茅之為物薄,而用可重也。慎斯術也以往,其无所失矣。」
書き下し
「同人、先には号咷(ごうとう)して後に笑う。」子曰く、「君子の道は、或いは出で或いは処(お)り、或いは黙し或いは語る。二人心を同じくすれば、其の利(するど)きこと金を断つ。同心の言は、其の臭(かおり)蘭の如し」と。「初六、藉(し)くに白茅(はくぼう)を用う、咎无し。」子曰く、「苟(いやし)くも諸(これ)を地に錯(お)くも可なり。之を藉くに茅を用う、何の咎か之れ有らん。慎みの至りなり。夫れ茅の物たる薄けれども、用は重かるべし。斯の術を慎みて以て往かば、其れ失う所无からん」と。
現代語訳
「同人の卦に、はじめは声をあげて泣き、のちに笑う、とある。」先生が言われた。「君子の道は、あるときは世に出て、あるときは退いて家にとどまり、あるときは黙し、あるときは語る。だが二人が心を一つにすれば、その鋭さは金属をも断ち切る。心を同じくする者の言葉は、その香りが蘭の花のようにかぐわしい」と。「大過の卦の初六に、供え物を敷くのに白い茅(ちがや)を用いる、咎はない、とある。」先生が言われた。「かりに地面にじかに置いてもよいはずのものである。それをわざわざ茅を敷いた上に置く。どうして咎があろうか。慎みの極みである。そもそも茅という物は薄くつまらないものだが、その用いようは重い意味を持ちうる。この心づかいを慎んで進んでいけば、失うものは何もないだろう」と。
解説
二つの爻辞に孔子の言葉を添えた一段です。前半は「二人同心、其利断金」。出処進退も、黙るか語るかも、人によって道は分かれます。それでも心を一つにできる相手がいれば、その力は金属さえ断つほど鋭い。そしてその二人が交わす言葉は蘭の香りのようだ、というのです。多数を集めることより、深く通じ合う一人を得ることの価値を語っています。後半は白い茅の話です。供え物は地面に置いても構わないのに、わざわざ薄い茅を敷く。実用ではなく、慎みの表れです。易では、物の値打ちは物自体ではなく、そこに込められた心づかいで決まると考えます。仕事に引きつければ、コストのかからない一手間、たとえば送り状に添える一言や、資料の体裁を整える数分が、相手の受け取り方を変えます。派手さのないところに慎みを置ける人は、大きく踏み外すことがありません。