易経 / 繋辞上
易則易知,簡則易從。易知則有親,易從則有功。有親則可久,有功則可大。可久則賢人之德,可大則賢人之業。易簡,而天下之理得矣;天下之理得,而成位乎其中矣。聖人設卦觀象,繫辭焉而明吉凶,剛柔相推而生變化。
新字:易則易知,簡則易従。易知則有親,易従則有功。有親則可久,有功則可大。可久則賢人之徳,可大則賢人之業。易簡,而天下之理得矣;天下之理得,而成位乎其中矣。聖人設卦観象,繋辞焉而明吉凶,剛柔相推而生変化。
書き下し
易(い)なれば則ち知り易く、簡なれば則ち従い易し。知り易ければ則ち親しみ有り、従い易ければ則ち功有り。親しみ有れば則ち久しかるべく、功有れば則ち大なるべし。久しかるべきは則ち賢人の徳、大なるべきは則ち賢人の業なり。易簡にして、天下の理得らる。天下の理得られて、位を其の中に成すなり。聖人卦を設けて象を観、辞を繋けて吉凶を明らかにし、剛柔相推して変化を生ず。
現代語訳
平易であれば理解されやすく、簡素であれば従いやすい。理解されやすければ人がなつき親しみ、従いやすければ実際の成果があがる。親しまれれば長く続けることができ、成果があがれば大きく広げることができる。長く続けられるのが賢人の徳であり、大きく広げられるのが賢人の事業である。平易と簡素とを得れば、天下の道理はおのずと手に入る。天下の道理が手に入れば、人はその天地のただ中に自分の位置を定めることができる。聖人は卦を立ててその象(かたち)を観察し、そこに言葉を結びつけて吉凶を明らかにし、剛と柔とが互いに推し合うことで変化が生まれることを示した。
解説
前段の「易簡」という言葉を、そのまま人の生き方と事業論へ展開した一段です。分かりやすいことは親しまれることにつながり、やりやすいことは成果につながる。そして親しまれるものは長続きし、成果の出るものは大きくなる。この短い連鎖が、そのまま「久しさ」と「大きさ」という二つの価値に結ばれていきます。易の思想では、天地が長く続き大きく広がっているのは、天地のやり方が単純だからだと考えます。人もまた同じ原理に従えばよい、というわけです。裏を返せば、分かりにくい理念、守りにくい規則は、どれほど立派に見えても人に根づかず、続きも育ちもしません。方針を一言で言えるか、手順を新人がその日から回せるか。この二つを点検するだけで、組織はずいぶん強くなります。後半では、聖人が卦と辞によって変化の読み方を人に手渡したことが語られ、易が占いの道具である前に、変化を読むための共通言語であることが示されます。
この章句が説くこと
易簡賢人の徳業卦と辞剛柔
関連する章句
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易経・繋辞上夫れ易は、聖人の深きを極めて幾(き)を研(きわ)むる所以なり。唯だ深きが故に、能く天下の志に通ず。唯だ幾なるが故に、能く天下の務めを成す。唯だ神なるが故に、疾(と)からずして速やかに、行かずして至る。子の曰く「易に聖人の道四つ有り」とは、此れを之れ謂うなり。子曰く、「夫れ易は、何を為す者ぞや。夫れ易は物を開き務めを成し、天下の道を冒(おお)う、斯(か)くの如き者のみ。是の故に、聖人は以て天下の志に通じ、以て天下の業を定め、以て天下の疑いを断つ」と。是の故に、蓍(し)の徳は、円にして神。卦の徳は、方にして知。六爻の義は、易にして貢(つ)ぐ。聖人此を以て心を洗い、退きて密に蔵(かく)れ、吉凶は民と患いを同じくす。神以て来たるを知り、知以て往(さ)にしを蔵む。其れ孰か能く此れに与らんや。古の聡明叡知にして神武にして殺さざる者か。
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易経・繋辞上是の故に、夫れ象は、聖人以て天下の賾(さく)を見る有り、而して諸を其の形容に擬し、其の物宜に象る。是の故に之を象と謂う。聖人以て天下の動を見る有り、而して其の会通を観て、以て其の典礼を行う。辞を繋けて、以て其の吉凶を断ず。是の故に之を爻と謂う。天下の賾を極むる者は、卦に存す。天下の動を鼓する者は、辞に存す。化して之を裁するは、変に存す。推して之を行うは、通に存す。神にして之を明らかにするは、其の人に存す。黙して之を成し、言わずして信あるは、徳行に存す。
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易経・繋辞上天は尊く地は卑くして、乾坤定まる。卑高以て陳(つら)なりて、貴賤位す。動静常有りて、剛柔断(さだ)まる。方は類を以て聚(あつ)まり、物は群を以て分かれて、吉凶生ず。天に在りては象を成し、地に在りては形を成して、変化見(あら)わる。是の故に、剛柔相摩し、八卦相盪(うご)かす。之を鼓するに雷霆を以てし、之を潤すに風雨を以てし、日月運行して、一寒一暑す。乾道は男を成し、坤道は女を成す。乾は大始を知り、坤は成物を作(な)す。乾は易(い)を以て知り、坤は簡を以て能くす。
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易経・繋辞上是の故に、貴賤を列(つら)ぬる者は位に存す。小大を斉(ひと)しくする者は、卦に存す。吉凶を弁ずる者は、辞に存す。悔吝を憂うる者は、介(かい)に存す。震(うご)きて咎无き者は、悔に存す。是の故に、卦に小大有り、辞に険易(けんい)有り。辞なる者は、各々其の之(ゆ)く所を指すなり。易は天地と準(なぞら)う、故に能く天地の道を弥綸(びりん)す。仰いで以て天文を観、俯して以て地理を察す、是の故に幽明の故を知る。始めに原(もと)づきて終わりに反る、故に死生の説を知る。精気は物と為り、遊魂は変と為る、是の故に鬼神の情状を知る。天地と相似たり、故に違わず。知は万物に周(あまね)くして、道は天下を済(すく)う、故に過たず。旁行して流れず、天を楽しみ命を知る、故に憂えず。土に安んじ仁に敦(あつ)し、故に能く愛す。天地の化を範囲して過たず、万物を曲成して遺さず、昼夜の道に通じて知る、故に神に方(ほう)无くして易に体无し。
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易経・繋辞上夫れ易は、広きかな大なるかな。以て遠きを言えば、則ち禦(ふせ)がれず。以て邇(ちか)きを言えば、則ち静かにして正し。以て天地の間を言えば、則ち備われり。夫れ乾は、其の静かなるや専(もっぱ)ら、其の動くや直(ちょく)、是を以て大いに生ず。夫れ坤は、其の静かなるや翕(とじ)、其の動くや闢(ひら)く、是を以て広く生ず。広大は天地に配し、変通は四時に配し、陰陽の義は日月に配し、易簡の善は至徳に配す。
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易経・繋辞下夫れ乾は、確然として人に示すこと易し。夫れ坤は、隤然として人に示すこと簡なり。爻なる者は、此に效う者なり。象なる者は、此に像る者なり。爻象は内に動きて、吉凶は外に見れ、功業は変に見れ、聖人の情は辞に見る。天地の大徳を生と曰い、聖人の大宝を位と曰う。何を以てか位を守る、仁と曰う。何を以てか人を聚む、財と曰う。財を理め辞を正し、民の非を為すを禁ずる、義と曰う。
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