易経 / 象伝
水在火上,既濟;君子以思患而豫防之。
新字:水在火上,既済;君子以思患而予防之。
書き下し
水火上に在るは既済なり、君子は以て患を思ひて豫め之を防ぐ。
現代語訳
水が火の上にある、これが既済の形である。君子はこれにならって、やがて起こりうる憂いを思いはかり、あらかじめそれを防いでおく。
解説
既済の卦は、下が火、上が水という形です。火の上に水をかけた鍋が据えられ、水は下へ、火は上へと働いて互いにかみ合っている。物事がすべて整い、成し遂げられた状態を意味します。しかし象伝は、ここで祝いの言葉を述べません。君子はやがて訪れる患いを思いはかり、あらかじめ防ぐのだと説きます。整いきった状態とは、これ以上よくなりようがないということでもあり、あとは崩れるほかない危うさを内に抱えているからです。火が強すぎれば水は蒸発し、水が多すぎれば火は消えてしまいます。仕事や経営でいえば、成功した直後こそ最も危ういという教えになります。うまくいっている間は、誰も問題を口にしません。だからこそ、うまくいっている今のうちに、どこから崩れうるかを自ら問い、手を打っておく。完成は終着ではなく、次の危機の始まりでもある。備えを怠らないことが、既済の教える身の処し方です。