易経 / 象伝
風行水上,渙;先王以享于帝立廟。
書き下し
風の水上を行くは渙なり、先王は以て帝を享り廟を立つ。
現代語訳
風が水の上を吹きわたっている、これが渙の形である。いにしえの王はこれにならって天帝をまつり、祖先の廟を建てた。
解説
渙の卦は、下が水、上が風という形です。風が水面を吹きわたり、水がほどけて散っていく光景で、渙とは「散る、ちりぢりになる」ことを意味します。氷が解けて流れ出すように、固まっていたものがほどけるのは悪いことばかりではありませんが、放っておけば人の心までばらばらになってしまいます。だからこそ、いにしえの王は天をまつり、祖先の廟を建てたのだと説かれます。散ろうとする人心を、共に敬い共に祈る場によって、もう一度ひとつに集めたのです。仕事や経営でいえば、組織が緩み、気持ちがばらけていくときにどうするかという話になります。規則で縛り直そうとしても、離れた心は戻りません。必要なのは、皆が改めて心を寄せられる中心です。何のためにこの仕事をしているのかという原点を思い起こす場を設け、共有し直す。散を治めるのは力ではなく敬いだというのが、渙の教える身の処し方です。