易経 / 象伝
山上有火,旅;君子以明慎用刑,而不留獄。
書き下し
山上に火有るは旅なり、君子は以て明慎に刑を用ひて、獄を留めず。
現代語訳
山の上に火が燃えている、これが旅の形である。君子はこれにならって明らかに慎重に刑を用い、訴訟を長く滞らせておかない。
解説
旅の卦は、下が山、上が火という形です。山の上を火が移りながら燃えていく光景で、旅とは「たびびと、よそ者としてとどまる」ことを意味します。火は一つところに長くとどまらず、燃え移っては次へ進み、後に留まりません。君子はこの姿にならい、刑を用いるにあたっては明るく慎重に見きわめ、しかも訴えごとを長く滞らせないのだと説かれます。火のように明らかに照らして判断し、火のように速やかに片をつけて引きずらない、ということです。仕事や経営に引き寄せれば、判断と処理の速さの話になります。問題を抱え込んだまま結論を先送りすれば、当事者は宙づりのまま苦しみ、組織全体が澱みます。慎重であることと、遅いこととは違います。よく見て、よく調べ、そのうえで速やかに決めて手放す。旅人が身軽に進むように、余計なものを溜め込まない。それが旅の教える身の処し方です。