易経 / 象伝
山上有木,漸;君子以居賢德善俗。
新字:山上有木,漸;君子以居賢徳善俗。
書き下し
山上に木有るは漸なり、君子は以て賢德に居りて俗を善くす。
現代語訳
山の上に木が生えている、これが漸の形である。君子はこれにならって賢く徳のある在り方に身を置き、世の風俗をよいものへと導く。
解説
漸の卦は、下が山、上が風(木)という形です。山の上に木が立ち、少しずつ枝を伸ばして育っていく光景で、漸とは「次第に、順を追って進む」ことを意味します。山上の木は、根を張るのに年月をかけ、目立たぬ速さで高くなっていきます。君子はこの姿にならい、まず自らが賢く徳ある在り方に身を置き、そのうえで世の習わしを少しずつよい方へ改めていくのだと説かれます。人の心や風習は、命令や号令で一夜にして変わるものではないからです。仕事や経営でいえば、組織の文化を変えたいときの心得になります。制度や標語をいくら掲げても、上に立つ者の日々のふるまいが伴わなければ、人は動きません。まず自分がその在り方に居る。そして急がず、時間をかけて周囲に染み渡らせる。山上の木のように、目に見えぬ速さで、しかし確かに高くなっていく。それが漸の教える身の処し方です。