易経 / 象伝
木上有火,鼎;君子以正位凝命。
書き下し
木の上に火有るは鼎なり、君子は以て位を正しくして命を凝らす。
現代語訳
木の上に火が燃えている、これが鼎の形である。君子はこれにならって自らの位を正し、天より受けた使命をしっかりと定める。
解説
鼎の卦は、下が風(木)、上が火という形です。薪の上に火が燃え、その火が鼎(かなえ)を熱して食べ物を煮る光景です。鼎は三本の脚でどっしりと立ち、傾かないことによって中身を煮ることができます。もし脚が一本でも狂えば、鼎は倒れ、中身はすべてこぼれてしまいます。だからこそ君子は、まず自分の立ち位置を正し、そのうえで担うべき使命を揺るがぬものとして定めるのだと説かれます。位が正しくなければ、どれほど志が高くても実らないのです。仕事や経営でいえば、自分の役割と責任の範囲をはっきりさせ、そこに腰を据えることにあたります。あちらこちらに手を出して立ち位置が定まらなければ、火にかけた鍋を絶えず揺らしているようなもので、何も煮えません。据わるべきところに据わり、担うべきものを腹に決める。落ち着きこそが成果を生むというのが、鼎の教える身の処し方です。