易経 / 象伝
木上有水,井;君子以勞民勸相。
新字:木上有水,井;君子以労民勧相。
書き下し
木の上に水有るは井なり、君子は以て民を勞ひて相ひ勸む。
現代語訳
木のつるべによって水が汲み上げられている、これが井の形である。君子はこれにならって民をねぎらい、人々が互いに助け合うよう励ます。
解説
井の卦は、下が風(木)、上が水という形です。木でできた汲み具が井戸の水を上へ運び上げる光景で、井とは村の井戸を指します。井戸は動かず、なくならず、汲みに来る者を選びません。身分の上下にかかわらず誰もが同じ水をもらい、しかも井戸の水は汲めば汲むほど新しく湧いてきます。君子はこの井戸の徳にならい、民の労をねぎらい、人々が互いに助け合うよう勧めるのだと説かれます。自分だけが潤うのではなく、皆が汲みに来られる井戸のような存在になれ、ということです。仕事や経営に置き換えれば、組織の中に「誰でも汲める井戸」を用意することにあたります。知識や経験を一人で抱え込まず、いつでも取りにいける形にしておく。働く人の苦労をきちんとねぎらい、助け合いが自然に起こるように励ます。与えても減らず、むしろ新しく湧いてくる。それが井の教える身の処し方です。