易経 / 象伝
澤无水,困;君子以致命遂志。
新字:沢无水,困;君子以致命遂志。
書き下し
澤に水无きは困なり、君子は以て命を致して志を遂ぐ。
現代語訳
沢に水がなく涸れている、これが困の形である。君子はこれにならって、我が身の命を投げうってでも志を遂げようとする。
解説
困の卦は、下が水、上が沢という形です。本来なら水をたたえているはずの沢から、水が下へ漏れ落ちて涸れてしまっている。困とは、力が尽き、行きづまり、身動きがとれなくなった状態を指します。誰にもそういう時期はあります。手を尽くしても報われず、周囲の理解も得られず、頼るものが乏しい。そのようなときに君子はどうするか。命をも懸けて志を遂げる、と象伝は言います。窮したからといって志を曲げるのではなく、外の条件が失われたときこそ、内に持つ志だけが自分を支えるという覚悟です。仕事や経営でも、資金が細り、人が離れ、状況が味方しない局面は訪れます。そこで問われるのは、都合のよいときだけの信念だったのか、それとも困ったときにも手放さない志なのかということです。嘆いて言葉を費やすより、静かに己の志を確かめ直す。それが困の教える身の処し方です。