易経 / 象伝
澤上於天,夬;君子以施祿及下,居德則忌。
新字:沢上於天,夬;君子以施祿及下,居徳則忌。
書き下し
澤、天に上(のぼ)るは、夬(かい)なり。君子以て祿を施して下に及ぼし、德に居りて則ち忌む。
現代語訳
沢の水が天にまで昇りつめている、これが夬の卦の形である。君子はこの形に学び、俸禄や利益を下の者にまで行き渡らせ、自分の徳の上にあぐらをかいて居座ることは戒めるのです。
解説
夬の卦は、乾(天)の上に兌(沢)がある形です。沢の水が天のきわまで昇りつめ、いまにも決壊してあふれ落ちようとしている。夬とは、決すること、切り開くこと。五つの陽が最上の一陰を押し切ろうとする、決断の時を表します。ただ、たまった水は落とさなければ危うい。だから象伝は、施祿及下、俸禄を施して下に及ぼせと説きます。上にたまった利益は、下へ流してこそ意味を持つのです。続く居德則忌の一句も重い。自分は徳のある人間だと自任し、その功に安んじて居座ることを戒める意と読まれます。仕事や経営に引きつければ、成果が上がり、上に富がたまった時こそ、それを社員や関係先に分配する時です。ため込めば必ずどこかで決壊する。そして、うまくいっているのは自分の徳のおかげだと思い始めた瞬間から、人心は離れていきます。分けること、驕らないこと。勝ちが見えた時ほど、この二つが問われます。