易経 / 象伝
澤上於天,夬;君子以施祿及下,居德則忌。
新字:沢上於天,夬;君子以施禄及下,居徳則忌。
書き下し
澤、天に上(のぼ)るは、夬(かい)なり。君子以て祿を施して下に及ぼし、德に居りて則ち忌む。
現代語訳
沢の水が天にまで昇りつめている、これが夬の卦の形である。君子はこの形に学び、俸禄や利益を下の者にまで行き渡らせ、自分の徳の上にあぐらをかいて居座ることは戒めるのです。
解説
夬の卦は、乾(天)の上に兌(沢)がある形です。沢の水が天のきわまで昇りつめ、いまにも決壊してあふれ落ちようとしている。夬とは、決すること、切り開くこと。五つの陽が最上の一陰を押し切ろうとする、決断の時を表します。ただ、たまった水は落とさなければ危うい。だから象伝は、施祿及下、俸禄を施して下に及ぼせと説きます。上にたまった利益は、下へ流してこそ意味を持つのです。続く居德則忌の一句も重い。自分は徳のある人間だと自任し、その功に安んじて居座ることを戒める意と読まれます。仕事や経営に引きつければ、成果が上がり、上に富がたまった時こそ、それを社員や関係先に分配する時です。ため込めば必ずどこかで決壊する。そして、うまくいっているのは自分の徳のおかげだと思い始めた瞬間から、人心は離れていきます。分けること、驕らないこと。勝ちが見えた時ほど、この二つが問われます。
この章句が説くこと
夬施禄及下易経象伝
関連する章句
-
易経・夬卦周易 第四十三卦。乾下兌上。易経。夬(かい)は、王庭に揚ぐ。孚ありて号(さけ)ぶ、厲(あや)ふきこと有り。告ぐること邑よりす、戎(じゅう)に即くに利あらず、往く攸有るに利あり。初九、前(すす)む趾に壮んなり、往きて勝たざれば咎と為す。九二、惕(おそ)れて号ぶ、莫夜(ぼや)に戎有るも、恤ふる勿かれ。九三、頄(つらぼね)に壮んなり、凶有り。君子は夬夬(かいかい)として、独り行きて雨に遇ふ、濡るるが若くして慍(いか)らるること有るも、咎无し。九四、臀(しり)に膚无く、其の行くこと次且(ししょ)たり。羊を牽けば悔亡ぶも、言を聞きて信ぜず。九五、莧陸(けんりく)夬夬たり、中行なれば咎无し。上六、号ぶこと无し、終に凶有り。彖に曰く、
-
易経・夬卦勝たずして往くは、咎なり。莫夜に戎有るも、中道を得ればなり。君子夬夬たるは、終に咎无きなり。其の行くこと次且たるは、位当らざればなり。言を聞きて信ぜざるは、聡明らかならざればなり。中行なれば咎无しとは、中未だ光いならざるなり。号ぶこと无きの凶は、終に長かるべからざるなり。
-
易経・彖伝夬(かい)は、決なり。剛の柔を決するなり。健にして説(よろこ)び、決して和す。「王庭に揚(あ)ぐ」とは、柔の五剛に乗ればなり。「孚(まこと)ありて号(さけ)ぶ、厲(あや)うきあり」とは、其の危うきこと乃ち光(おお)いなればなり。「邑(ゆう)より告ぐ、戎(じゅう)に即(つ)くに利あらず」とは、尚(たっと)ぶ所乃ち窮すればなり。「往(ゆ)く攸(ところ)あるに利あり」とは、剛長じて乃ち終わればなり。
-
易経・益卦元吉にして咎无しとは、下は事を厚くせざるなり。或いは之を益すとは、外より来るなり。益すに凶事を用ゐるとは、固(もと)より之を有すればなり。公に告ぐれば従はるとは、以て志を益すなり。孚有りて心を恵むとは、之を問ふ勿きなり。我が徳を恵とすとは、大いに志を得るなり。之を益すこと莫しとは、偏辞なり。或いは之を撃つとは、外より来るなり。
-
易経・象伝澤、木を滅するは、大過なり。君子以て獨立して懼(おそ)れず、世を遯(のが)れて悶(うれ)うること无し。
-
易経・益卦周易 第四十二卦。震下巽上。易経。益は、往く攸有るに利あり。大川を渉るに利あり。初九、用て大作を為すに利あり、元吉にして咎无し。六二、或いは之を益す、十朋の亀も違ふ克はず、永く貞にして吉。王用て帝に享(まつ)る、吉。六三、之を益すに凶事を用ゐる、咎无し。孚有りて中行し、公に告ぐるに圭(けい)を用ゐる。六四、中行して公に告ぐれば従はる。用て依(よ)ることを為して国を遷すに利あり。九五、孚有りて心を恵む、問ふ勿くして元吉。孚有りて我が徳を恵とす。上九、之を益すこと莫く、或いは之を撃つ。心を立つること恒勿し、凶。彖に曰く、
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る