易経 / 象伝
山下有澤,損;君子以懲忿窒欲。
新字:山下有沢,損;君子以懲忿窒欲。
書き下し
山の下に澤有るは、損なり。君子以て忿(いかり)を懲(こ)らし、欲を窒(ふさ)ぐ。
現代語訳
山の下に沢がある、これが損の卦の形である。君子はこの形に学び、こみあげる怒りを抑えつけ、わき起こる欲望をふさぎとめるのです。
解説
損の卦は、兌(沢)の上に艮(山)がある形です。沢が深く掘り下げられ、その土によって山が高く盛り上がる。下を減らして上に益する、それが損、すなわち減らすことの意味です。減らすと聞くと損失のようですが、易では、正しく減らすことこそが益をもたらすと見ます。では人は何を減らすべきか。象伝の答えは明快です。忿と欲、すなわち怒りと欲望。この二つこそ、人の判断を最も狂わせ、いくら削っても惜しくないものだというのです。仕事や経営でも、大きな失敗の多くは能力不足より、怒りに任せた一言や、欲に駆られた一手から生じます。腹が立ったときにその場で返信を送らない。もうかりそうだという話に飛びつかない。ただそれだけのことで、防げる損失がどれほどあるでしょうか。何かを足すより、余計な感情と欲を削るほうが、はるかに大きく人を高めます。削ることは、立派な投資なのです。
この章句が説くこと
損懲忿窒欲易経象伝
関連する章句
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言志四録・言志耋録 第六十二条 忿は火、慾は水情の発するに緩急有り。忿慾は尤も急なりと為す。忿は猶ほ火のごとし、懲めざれば将に自ら焚かんとす。慾は猶ほ水のごとし、窒がざれば将に自ら溺れんとす。損卦の工夫、緊要此に在り。
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『忍経』憤爭損身,憤亦損財應令君曰く「人心に憤る所有る者は、必ず爭ふ所有り。爭ふ所有る者は、必ず損する所有り。憤りて爭鬥すれば其の身を損し、憤りて爭訟すれば其の財を損す。此れ君子の鑒みる所以にして、易の損にして憤を懲らすなり」と。
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