易経 / 象伝
雷在天上,大壯;君子以非禮弗履。
新字:雷在天上,大壮;君子以非礼弗履。
書き下し
雷、天上に在るは、大壯なり。君子以て禮に非ざれば履(ふ)まず。
現代語訳
雷が天の上で鳴りとどろいている、これが大壮の卦の形である。君子はこの形に学び、礼にかなわないことは決して踏み行わないのです。
解説
大壮の卦は、乾(天)の上に震(雷)がある形で、天空にとどろく雷のように、勢いがきわめて盛んな時を表します。大壮とは、大いに壮んなこと。四つの陽が下から伸び上がり、力がみなぎっている。しかし象伝は、その勢いを称えるのではなく、非礼弗履、すなわち礼にはずれることは踏まない、と戒めます。ここが易の深いところです。力が強い時ほど、人はそれを振るいたくなる。押し通せてしまうがゆえに、無理を無理と思わなくなる。そして勢いに任せて礼を欠いたとき、盛んな力はそのまま自分を傷つける刃に変わるのです。仕事や経営でも、業績が伸び、発言力が増した時ほど危うい。取引先への態度、社員への言葉づかい、手続きの省略。押せば通るからと踏み越えたことが、後に信用の失墜として返ってきます。強い時にこそ、あえて手順を守り、頭を下げ、筋を通す。その自制が、勢いを長続きさせるのです。