易経 / 象伝
山下有雷,頤;君子以慎言語,節飲食。
書き下し
山の下に雷有るは、頤(い)なり。君子以て言語を慎み、飲食を節す。
現代語訳
山の下に雷がある、これが頤の卦の形である。君子はこの形に学び、口から出る言葉を慎み、口に入れる飲食を節するのです。
解説
頤とは、あご、口もとのこと。頤の卦は、艮(山)の下に震(雷)がある形で、上のあごは山のように動かず、下のあごが雷のように動く、まさに物を噛む口の姿を表しています。そして口には二つのはたらきがあります。ものを出すはたらきと、ものを入れるはたらき。出るのは言葉であり、入るのは飲食です。だから象伝は、君子はこの形を見て、言葉を慎み、飲食を節すると説くのです。養うという頤の意味からすれば、口をどう使うかが、そのまま自分の心身と人間関係を養いもすれば損ないもする、ということになります。日々の仕事でも、これはきわめて実際的な戒めです。不用意なひと言が信用を崩し、暴飲暴食が判断力を鈍らせる。逆に、言葉を選んで話す人は静かに信頼を集め、食を整える人は長く働き続けられます。会議で口を開く前に一呼吸おく、疲れている時ほど食事と睡眠を整える。地味に見えるこの二つの節制が、経営者や指導者の土台を養うのです。