易経 / 象伝
天在山中,大畜;君子以多識前言往行,以畜其德。
新字:天在山中,大畜;君子以多識前言往行,以畜其徳。
書き下し
天、山中に在るは、大畜なり。君子以て多く前言往行を識(しる)し、以て其の德を畜(たくわ)う。
現代語訳
広大な天が山の中にたくわえられている、これが大畜の卦の形である。君子はこの形に学び、昔の人の言葉や行いを数多く学び知って、自分の徳をたくわえるのです。
解説
大畜の卦は、艮(山)の下に乾(天)がある形で、あの果てしない天が小さな山の中にすっぽりとたくわえられている、という大胆な姿を描いています。畜とは、たくわえること、そして押しとどめること。山が天を内にたくわえるように、人もまた自分の内側に大きなものを蓄積できる、というのが大畜の教えです。ではその中身は何かといえば、象伝は前言往行、すなわち先人の言葉と行いだと言います。自分ひとりの経験は限られていますが、古今の人の言行を数多く学び知ることで、人は自分の器を天のように広げていくことができるのです。仕事や経営に引きつければ、これは学びの蓄積の話です。目の前の成果を急ぐ時期があってもよいのですが、大畜の時は、あえて動かずに読み、聞き、記録し、内に力を溜める時。良書を読み、先達の判断の跡をたどり、他社の事例を集める。すぐには売上にならなくとも、その蓄えがやがて大きな決断を支える徳となります。急がず蓄えることは、立派な仕事なのです。