易経 / 象伝
天下雷行,物與无妄;先王以茂對時,育萬物。
新字:天下雷行,物与无妄;先王以茂対時,育万物。
書き下し
天の下に雷行き、物ごとに无妄(むぼう)を與(あた)う。先王、以て茂(さか)んに時に對(こた)え、萬物を育(やしな)う。
現代語訳
天の下を雷がめぐり、あらゆるものにいつわりのないありのままの本性を与えている、これが无妄の卦の形である。いにしえの王はこの形に学び、盛んに天の時に応じて、万物を育てました。
解説
无妄の卦は、乾(天)の下に震(雷)がある形で、春の雷が天の下を走りまわり、その響きによって万物がいっせいに目を覚ます姿を表します。妄とはでたらめ、いつわりのこと。无妄とは、作為やごまかしのない、天から与えられたそのままの姿を指します。雷は好き嫌いで鳴る場所を選びません。時が来たから鳴り、その時が来たから草木が芽吹く。そこには私心のはたらく余地がないのです。いにしえの王はこの理に学び、自分の都合ではなく天の時に応じて政を行い、万物を育てたと象伝は説きます。私たちの仕事や経営にも、この无妄の姿勢は生きます。無理に流行を追い、数字を取り繕い、実力以上に見せようとするところから歪みは始まります。むしろ、自社が本来もっている力は何か、いま世の中が求めている時機はどこかを見きわめ、そこに素直に応じていく。作為を捨てて時に応じることが、結果として最も物を育てる道なのです。