易経 / 象伝
山附於地,剝;上以厚下安宅。
書き下し
山、地に附(つ)くは、剝なり。上(かみ)、以て下を厚くして宅を安んず。
現代語訳
山が地にぴたりと寄りかかって崩れ落ちようとしている、これが剝の卦の形である。上に立つ者はこの形に学び、下にある土台を手厚くすることで、自分の住まいを安らかに保つのです。
解説
剝の卦は、艮(山)が坤(地)の上に乗った形で、高くそびえるはずの山が地面にへばりつくように崩れかけている姿を表します。山は地という土台があってはじめて立っていられるのに、その土台がやせ細れば、山そのものが剝がれ落ちてしまう。ここから、上に立つ者は何よりもまず下を厚くせよ、という教えが導かれます。剝は削り取られ、はぎ取られていく時であり、そういう局面で上が自分の高さばかりを守ろうとすれば、崩壊はいっそう早まります。逆に、下を厚くすることこそが上を安んじる唯一の道なのだと説くのです。日々の仕事や経営に置き換えれば、業績が削られていく苦しい時期にこそ、現場・部下・顧客・取引先といった足元を手厚くすることが要になります。人員や待遇をまず削り、土台をやせさせる決断は、目先の数字を守っても組織という山を崩します。自分の地位を安定させたいと願うなら、支えてくれている人々の暮らしと働きやすさを厚くする。それが剝の時の身の処し方です。