易経 / 象伝
澤上有地,臨;君子以教思无窮,容保民无疆。
新字:沢上有地,臨;君子以教思无窮,容保民无疆。
書き下し
沢上に地有るは臨なり、君子は以て教え思うこと窮まり无く、民を容れ保んずること疆り无し。
現代語訳
沢の上に地があり、高い岸が水に臨んでいる、これが臨の形である。君子はこれにならい、教え導こうとする思いは尽きることがなく、民を受け入れ守ることに限りがない。
解説
臨は下に沢、上に地を置き、高い岸が下の水を見下ろすように臨んでいる形です。臨むとは、上の者が下に近づき、向き合うことを指します。上から見張るのではなく、そばに寄って接する。そこに臨という卦の味わいがあります。象伝は、君子は教え思う心が尽きることなく、民を受け入れ守ることに限りがない、といいます。教育と保護、この二つに際限を設けないというのです。相手を見限らない、期限を切らない、条件をつけない。それは甘やかしとは違い、根気強く関わり続ける覚悟のことです。人を育てる仕事は、多くの場合すぐに結果が出ません。一度言って伝わらないと切り捨てたくなりますが、そこで終えれば何も育ちません。何度でも向き合い、失敗を引き受け、居場所を守る。その尽きせぬ関わりこそが人を変えると、臨は説いています。