易経 / 象伝
地中有水,師;君子以容民畜眾。
書き下し
地中に水有るは師なり、君子は以て民を容れ衆を畜う。
現代語訳
大地の中に水がたくわえられている、これが師の形である。君子はこれにならい、民を受け入れ、人々を養い育てる。
解説
師は下に水、上に地を置き、大地の中に水がひそかに蓄えられている形です。地面を見ただけでは水は見えませんが、掘れば必ずわき出る。師とは軍隊のことで、民の中に力が蓄えられており、事あるときにそれが集まって軍となる、という見方がここにあります。だから象伝は、君子はこれを見て民を容れ、衆を養うといいます。強い軍を持ちたければ、まず民を大切にせよという順序です。人を集めてから育てるのではなく、ふだんから受け入れ、養っておくから、いざというときに動く力になるのです。組織で言えば、採用と育成は緊急時の対策ではなく平時の投資だということでしょう。人が育つ余白を残し、多少の失敗を許し、腹を割って話せる関係を蓄えておく。目に見えないところに水を溜めた組織だけが、有事に人を動かせます。師はその静かな備えを説いています。