易経 / 彖伝
“未濟,亨”,柔得中也。“小狐汔濟”,未出中也。“濡其尾,無攸利”,不續終也。雖不當位,剛柔應也。
新字:“未済,亨”,柔得中也。“小狐汔済”,未出中也。“濡其尾,無攸利”,不続終也。雖不当位,剛柔応也。
書き下し
「未済(びせい)は亨(とお)る」とは、柔中を得ればなり。「小狐(しょうこ)汔(ほとん)ど済(わた)る」とは、未(いま)だ中を出でざればなり。「其の尾を濡らす、利(よ)ろしき攸(ところ)無し」とは、続けて終わらざればなり。位に當(あ)たらずと雖(いえど)も、剛柔応ずるなり。
現代語訳
「未済は通じる」とは、柔が中を得ているからである。「小狐がもう少しで渡りきる」とは、まだ川の中から出ていないということである。「その尾を濡らす、よいところはない」とは、最後まで続けきれないからである。位はどれも当たっていないけれども、剛と柔とが互いに応じ合っているのである。
解説
未済(びせい)は「まだ渡り終えていない」、未完成をあらわす卦です。彖辞は、柔が中を得ているから通じると述べつつ、小狐が川をほとんど渡りきったところで尾を濡らしてしまう姿を示します。あと一歩というところで最後まで続けきれない、その危うさへの戒めです。六爻の位はすべて当たっておらず、秩序としては整っていません。しかし剛と柔はきちんと応じ合っている。整ってはいないけれども、可能性は生きているのです。易経が完成の既済で終わらず、この未済を最後に置いて六十四卦を閉じたのは象徴的でしょう。終わりは終わりではなく、次の始まりだと示すためです。仕事や経営でも、渡り終えた案件の先にまた次の川があります。最後の一歩まで気を抜かないこと、そして未完成であることを恥じず、また新たに渡り始めること。それがこの卦の教えです。