易経 / 彖伝
漸之進也,女歸吉也。進得位,往有功也。進以正,可以正邦也。其位剛得中也。止而巽,動不窮也。
書き下し
漸(ぜん)の進むや、女の帰(とつ)ぐこと吉なり。進みて位を得、往きて功あるなり。進むに正を以てす、以て邦を正すべきなり。其の位は剛にして中を得たり。止まりて巽(したが)い、動きて窮まらず。
現代語訳
漸のようにゆるやかに進むあり方は、女性が嫁いでいくのが吉であることに通じる。進んでしかるべき位を得るので、行けば功が上がる。進むにあたって正しさをもってするので、それによって国を正すこともできる。その位は剛でありながら中を得ている。内に止まって外に従い、そのように動くから行き詰まることがない。
解説
漸は「だんだんに進む」ことを表す卦です。彖伝は、女性が礼を踏んで嫁いでいく道筋になぞらえて、順序を守って一歩ずつ進むことの吉を説きます。急いで飛び越えず、段階を経るからこそしかるべき位を得られ、位を得るから行った先で功が上がる。しかもその進み方は「正を以てす」――正しさに支えられているので、自分が整うだけでなく、国を正すことにまでつながっていくとされます。土台にあるのが「止まりて巽い」という構造で、内には落ち着いて止まる力があり、外にはへりくだって従う柔らかさがある。だから動いても行き詰まらないのです。仕事でも、実力や信用は段階を飛ばして手に入りません。手順を守り、身の丈に合った位を一つずつ得ていく歩みは遅く見えて、実は最も折れにくい道です。