易経 / 彖伝
震,亨。“震來虩虩”,恐致福也。“笑言啞啞”,後有則也。“震驚百里”,驚遠而懼邇也。“不喪匕鬯”,出可以守宗廟社稷,以為祭主也。
新字:震,亨。“震来虩虩”,恐致福也。“笑言啞啞”,後有則也。“震驚百里”,驚遠而懼邇也。“不喪匕鬯”,出可以守宗廟社稷,以為祭主也。
書き下し
震(しん)は亨(とお)る。「震(しん)来たりて虩虩(げきげき)たり」とは、恐れて福を致すなり。「笑言(しょうげん)啞啞(あくあく)たり」とは、後に則(のり)あるなり。「震、百里を驚かす」とは、遠きを驚かして邇(ちか)きを懼(おそ)れしむるなり。「匕鬯(ひちょう)を喪(うしな)わず」とは、出でて以て宗廟社稷(そうびょうしゃしょく)を守り、以て祭主と為るべきなり。
現代語訳
震は通じる。「雷が轟いてきて、びくびくと恐れ慎む」とは、恐れ慎むことによって福を招き寄せるということである。「その後に笑い声、話し声がのびやかに響く」とは、後になって守るべき法度が定まるからである。「雷鳴が百里を驚かす」とは、遠くの者を驚かせ、近くの者を畏れ慎ませるということである。「祭りの匙と酒を取り落とさない」とは、その人こそ世に出て宗廟と社稷を守り、祭りの主となることができる、ということである。
解説
震は雷を表す卦で、突然の衝撃や動揺を主題とします。彖伝はまず、雷が轟いて人がびくびくと身を慎むことを「恐れて福を致す」と言い換えます。恐れそのものが悪いのではなく、恐れによって身を引き締めることが、かえって福を招くというのです。そして震えが去ったあとに笑い声が戻るのは、その体験を通じて守るべき法度が定まったからだと説かれます。雷鳴は百里を驚かせ、遠い者を驚かせて近い者を畏れ慎ませます。この時に最も重んじられるのが「匕鬯を喪わず」――大きな衝撃のただ中でも、祭りの匙と酒を取り落とさない落ち着きです。不測の事態に見舞われたとき、動じないことより、動じても手にした務めを取り落とさないことが問われます。慌てのなかでも中心の一事を守り抜ける人が、組織を託されるのです。