易経 / 彖伝
“困”,剛掩也。險以説,因而不失其所,亨,其唯君子乎。“貞大人吉”,以剛中也。“有言不信”,尚口乃窮也。
新字:“困”,剛掩也。険以説,因而不失其所,亨,其唯君子乎。“貞大人吉”,以剛中也。“有言不信”,尚口乃窮也。
書き下し
困(こん)は、剛の掩(おお)わるるなり。険にして以て説(よろこ)び、困(くる)しみて其の所を失わず、亨(とお)る、其れ唯(た)だ君子か。「貞(てい)にして大人は吉なり」とは、剛中なるを以てなり。「言うことあるも信ぜられず」とは、口を尚(たっと)べば乃ち窮すればなり。
現代語訳
困とは、剛(陽)が柔(陰)に覆い隠されることである。危険な中にあってもなお喜びを失わず、苦しみの中にあっても自分の在るべき場所を失わない。それでこそ通じるのであって、それができるのはただ君子だけであろう。「正しさを守れば大人は吉である」とは、剛でありながら中を得ているからである。「何か言っても信じてもらえない」とは、口先を頼みとすれば行き詰まるからである。
解説
困は、行き詰まり・窮乏の時を表す卦です。彖伝は、剛が柔に覆い隠されている状態、つまり本来の力が発揮できず押さえ込まれている場面だと説明します。注目したいのは「険にして以て説び、困しみて其の所を失わず」という一句です。困難のただ中にあっても心の喜びを失わず、自分の立つべき場所、守るべき筋を手放さない。それができる人だけが、この時をくぐり抜けて通じていける、というのです。もう一つの戒めが「言うことあるも信ぜられず」で、苦しい時ほど人は弁解や説得に走りますが、口先を頼りにすれば行き詰まるだけだと述べます。仕事や経営でも、資金や人手が細り、思うように動けない時期があります。そこで必要なのは饒舌な言い訳ではなく、正しさを守り、日々の務めを崩さない静かな持続です。困の時の身の処し方は、言葉ではなく在り方で示されます。
この章句が説くこと
困苦境易経彖伝君子
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