易経 / 彖伝
損,損下益上,其道上行。損而有孚,元吉,無咎,可貞,利有攸往,曷之用?二簋可用享。二簋應有時。損剛益柔有時,損益盈虛,與時偕行。
新字:損,損下益上,其道上行。損而有孚,元吉,無咎,可貞,利有攸往,曷之用?二簋可用享。二簋応有時。損剛益柔有時,損益盈虚,与時偕行。
書き下し
損(そん)は、下を損して上を益す、其の道上行す。損して孚(まこと)有れば、元吉、咎无く、貞しくすべく、往く攸(ところ)有るに利ろし。曷(なに)をか之れ用ゐん。二簋(にき)用て享(きょう)すべし。二簋も応(まさ)に時有るべし。剛を損して柔を益すにも時有り。損益盈虚(そんえきえいきょ)、時と偕(とも)に行ふ。
現代語訳
損とは、下を減らして上に加えることであり、その道は上へ向かって行く。減らすにあたって誠実さがあれば、大いに吉であり、とがめもなく、正しさを守ることができ、進み行くところがあるのがよい。では何を供えものとして用いるのか。二つの簋という質素な供えものでも、祭りに供することができる。ただし二つの簋で済ませるにも、ふさわしい時というものがある。剛を減らして柔に加えるにも、それにふさわしい時がある。減らすことと増やすこと、満ちることと欠けること、それらはみな時とともに行われるのである。
解説
損の彖辞は、減らすことの意味を問い直します。下を損して上を益す、つまり何かを削って別のところへ回す形です。ここで決め手になるのが「孚」、すなわち誠実さです。誠がこもっていれば、減らす行いも大いに吉であり、とがめはないと言います。彖辞はさらに、祭りの供えものは二つの簋という質素なものでも構わないと述べます。形式の豪華さではなく、真心と時宜こそが本質だという主張です。そして「損益盈虚、時と偕に行ふ」と結びます。仕事や経営でも、削減や撤退、自分の取り分を減らす決断は避けて通れません。それ自体が善でも悪でもなく、誠実さをもって行われているか、いま行うべき時かどうかが問われます。増やすことと減らすことを、時に応じて使い分ける柔軟さが求められます。