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易経 / 彖伝

“遯亨”,遯而亨也。剛當位而應,與時行也。“小利貞”,浸而長也。遯之時義大矣哉!

新字:“遯亨”,遯而亨也。剛当位而応,与時行也。“小利貞”,浸而長也。遯之時義大矣哉!

書き下し

「遯(とん)は亨る」とは、遯(しりぞ)きて亨るなり。剛位に当りて応じ、時と与(とも)に行くなり。「小しく貞しきに利ろし」とは、浸(ようや)くにして長ずればなり。遯の時義大なるかな。

現代語訳

「遯は通じる」とは、退くことによってかえって通じるということである。剛強な者が正しい位にあって応ずる者があり、時勢とともに動いていく。「わずかに正しさを守るのがよい」とは、陰の勢いがじわじわと伸びてきているからである。退くべき時の意義は、なんと大きいことか。

解説

遯の彖辞は、退くことでかえって物事が通ると説きます。遯は身を引き隠れることですが、単なる敗走ではありません。剛強な者が正しい位にあって応ずる者があり、「時と与に行く」、つまり引くべき時を見極めて引くのだ、というのが要点です。この卦では下から陰の勢いがじわじわと伸びてきており、真正面から争えば力を損なうばかりです。だから「小しく貞しきに利ろし」と、控えめに正しさを守る道が示されます。仕事や経営でも、環境が不利に傾き始めたときに踏みとどまることだけが勇気ではありません。撤退や縮小、距離の取り方を早めに決めることは、次の機会を残すための積極的な選択です。退き時の意義は大きい、と彖辞が嘆じるのは、この判断の難しさと重さゆえでしょう。

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