易経 / 彖伝
賁亨,柔來而文剛,故亨。分,剛上而文柔,故小利有攸往。剛柔交錯,天文也。文明以止,人文也。觀乎天文,以察時變;觀乎人文,以化成天下。
新字:賁亨,柔来而文剛,故亨。分,剛上而文柔,故小利有攸往。剛柔交錯,天文也。文明以止,人文也。観乎天文,以察時変;観乎人文,以化成天下。
書き下し
賁は亨る、柔来りて剛を文る、故に亨る。分かれて、剛上りて柔を文る、故に小しく往く攸有るに利ろし。剛柔交錯するは、天文なり。文明にして以て止まるは、人文なり。天文を観て、以て時の変を察し、人文を観て、以て天下を化成す。
現代語訳
賁は通じる。柔が来て剛を飾る。だから通じるのである。分かれて、剛が上って柔を飾る。だから少しばかり進むところがあるのがよい。剛と柔とが入り交じるのが、天の模様である。文かに明らかであって、その分をわきまえて止まるのが、人の模様である。天の模様を観てその時々の移り変わりを察し、人の模様を観て天下を教化し成し遂げるのである。
解説
賁は「飾る」ことをあらわす卦です。彖伝は飾りを単なる装飾とは見ません。「剛柔交錯するは、天文なり」——硬いものと柔らかいものが交わり合う、その綾こそ天の模様だと言います。星の運行も四季のめぐりも、異なる力が織りなす模様なのだ、と。そして「文明にして以て止まるは、人文なり」。ここが要でしょう。人の文化は、明るく美しくありながら、どこかで「止まる」——度を越さずにとどまることを知っている。飾りが飾りとして生きるのは、節度があるからです。だから「小しく往く攸有るに利ろし」、少し進むのはよいが、大きく踏み出すべき時ではない、と限定されます。見せ方や体裁は大切です。しかし中身を離れて飾りだけが膨らめば、それは飾りですらなくなります。天の模様に時の移ろいを読み、人の模様に節度を学ぶ。飾ることの本質は、実は止まることを知ることにあります。