易経 / 彖伝
頤中有物曰噬嗑。噬嗑而亨,剛柔分,動而明,雷電合而章。柔得中而上行,雖不當位,利用獄也。
新字:頤中有物曰噬嗑。噬嗑而亨,剛柔分,動而明,雷電合而章。柔得中而上行,雖不当位,利用獄也。
書き下し
頤中に物有るを噬嗑と曰う。噬嗑して亨る、剛柔分かれ、動きて明らかに、雷電合して章らかなり。柔中を得て上行す、位に当たらずと雖も、獄を用うるに利ろし。
現代語訳
口の中に物があるのを噬嗑という。噛み合わせることで通じる。剛と柔とが分かれて位置し、動いてしかも明るく、雷と電光とが合わさって輝きあらわれる。柔が中を得て上へと進む。ふさわしい位ではないけれども、裁きを行うのによいのである。
解説
噬嗑は「噛み合わせる」ことをあらわす卦です。彖伝はまず「頤中に物有る」——口の中に邪魔なものが挟まっている状態だと説明します。物が挟まったままでは、上下の歯は噛み合わない。だから噛み砕く。それによって初めて通じるのだ、というのが「噬嗑して亨る」の意味です。この障害物を取り除くはたらきが、そのまま「獄を用うる」、すなわち法を用いて裁くことに重ねられます。組織や社会の中に居座った障害を、痛みを伴っても除かなければ、全体は動かない。ただし注意したいのは、この卦が「動きて明らかに、雷電合して章らかなり」と述べる点でしょう。裁きには、雷のような断固たる行動と、電光のような明るさ——事実がはっきり照らされていること——の両方が要ります。断固としているだけでは暴力になり、明らかなだけでは動きません。問題を除く時、勢いと明晰さは両輪です。