易経 / 彖伝
屯,剛柔始交而難生。動乎險中,大亨貞。雷雨之動滿盈,天造草昧。宜尋建侯而不寧。
新字:屯,剛柔始交而難生。動乎険中,大亨貞。雷雨之動満盈,天造草昧。宜尋建侯而不寧。
書き下し
屯は、剛柔始めて交わりて難生ず。険中に動く、大いに亨りて貞し。雷雨の動き満盈し、天造草昧なり。宜しく侯を建つるを尋ぬべくして寧んぜず。
現代語訳
屯とは、剛と柔とが初めて交わって、そこに困難が生じることである。危険のただ中で動く。それでも大いに通じ、正しさが保たれる。雷と雨のはたらきが満ちあふれ、天のつくり出す世はまだ草深く暗い。そこで諸侯を立てて任せることを考えるべきであり、安閑としてはいられないのである。
解説
屯は、物事が生まれ出ようとして産みの苦しみにある時をあらわす卦です。彖伝は「剛柔始めて交わりて難生ず」と言います。硬いものと柔らかいもの、異質な力が初めて出会えば、そこには必ず摩擦と困難が生じる。創業期や新規事業の立ち上げが混乱するのは失敗の証ではなく、むしろ当たり前なのだという見方です。「険中に動く」——危うさの中で動くからこそ、大きく通じるためには正しさが要る。「雷雨の動き満盈し、天造草昧なり」とは、雷鳴と雨が満ち、天地がまだ草深く暗いという情景で、秩序が生まれる直前の混沌を描いています。そこで勧められるのが「侯を建つる」、つまり任せる人を立てることです。混乱の時期に一人で抱え込まず、役割と体制を早めに整える。落ち着かない日々のただ中でも、人を立て、筋を通しておく。それが屯の時の身の処し方でしょう。