伝習録 / 黄以方録
先生曰:「人生大病只是一傲字。為子而傲必不孝,為臣而傲必不忠,為父而傲必不慈,為友而傲必不信:故象與丹朱俱不肖,亦只一傲字,便結果了此生。諸君常要體此。人心本是天然之理,精精明明,無纖介染著,只是一無我而已;胸中切不可有,有即傲也。古先聖人許多好處,也只是無我而已,無我自能謙。謙者眾善之基,傲者眾惡之魁。」
新字:先生曰:「人生大病只是一傲字。為子而傲必不孝,為臣而傲必不忠,為父而傲必不慈,為友而傲必不信:故象与丹朱倶不肖,亦只一傲字,便結果了此生。諸君常要体此。人心本是天然之理,精精明明,無繊介染著,只是一無我而已;胸中切不可有,有即傲也。古先聖人許多好処,也只是無我而已,無我自能謙。謙者衆善之基,傲者衆悪之魁。」
書き下し
先生曰く、「人生の大病は只だ是れ一の傲の字なり。子と為りて傲れば必ず不孝、臣と為りて傲れば必ず不忠、父と為りて傲れば必ず不慈、友と為りて傲れば必ず不信なり。故に象と丹朱の倶に不肖なるも、亦た只だ一の傲の字にて、便ち此の生を結果し了れり。諸君、常に此を体せんことを要す。人心は本と是れ天然の理なり。精精明明にして、纖介の染著も無し。只だ是れ一の我無きのみ。胸中、切に有るべからず。有れば即ち傲なり。古先の聖人の許多の好き処も、也(また)只だ是れ我無きのみ。我無ければ自ら能く謙なり。謙は衆善の基、傲は衆悪の魁なり」と。
現代語訳
先生は言われた。「人生の大病は、ただ一つの『傲』の字だ。子として傲れば必ず不孝、臣として傲れば必ず不忠、父として傲れば必ず不慈、友として傲れば必ず不信だ。だから象と丹朱がともに不肖だったのも、この一字が生涯を決めてしまった。諸君は常にこれを体せよ。人の心はもともと天然の理だ。精しく明るく、少しの染みもない。ただ一つ、我がないだけだ。胸中に決してあってはならない。あれば傲だ。古の聖人の多くの良い所も、我がないだけだ。我がなければ、自ずと謙になる。謙は多くの善の基、傲は多くの悪の首魁だ」。
解説
この章句が説くこと
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