伝習録 / 黄以方録
嘗見先生送二三耆宿出門,退坐於中軒,若有憂色。德洪趨進請問。先生曰:「頃與諸老論及此學,真員鑿方枘。此道坦如道路,世儒往往自加荒塞,終身陷荊棘之場而不悔,吾不知其何說也!」德洪退,謂朋友曰:「先生誨人,不擇衰朽,仁人憫物之心也。」
新字:嘗見先生送二三耆宿出門,退坐於中軒,若有憂色。徳洪趨進請問。先生曰:「頃与諸老論及此学,真員鑿方枘。此道坦如道路,世儒往往自加荒塞,終身陥荊棘之場而不悔,吾不知其何説也!」徳洪退,謂朋友曰:「先生誨人,不択衰朽,仁人憫物之心也。」
書き下し
嘗て先生の二三の耆宿を送りて門を出で、退きて中軒に坐するを見るに、憂色有るが若し。徳洪、趨り進みて問わんことを請う。先生曰く、「頃(さき)に諸老と此の学を論及するに、真に円鑿方枘なり。此の道は坦かなること道路の如し。世儒は往往にして自ら荒塞を加え、終身、荊棘の場に陥りて悔いず。吾、其の何の説なるかを知らず」と。徳洪、退きて朋友に謂いて曰く、「先生の人を誨うるは、衰朽を択ばず。仁人の物を憫れむの心なり」と。
現代語訳
かつて先生が二、三人の老学者を送り出して門を出て、中軒に退いて座るのを見た。憂いの色があった。徳洪は進み出て尋ねた。先生は「先ほど老先生方とこの学を論じたが、まことに丸い穴に四角い枘だ。この道は道路のように平らなのに、世の儒者はしばしば自ら荒れさせ塞ぎ、生涯、茨の中に陥っても悔いない。私にはその理由が分からない」と言われた。徳洪は退いて友人に「先生が人を教えるのに、老いた者も選ばない。仁人が物を憐れむ心だ」と言った。
解説
本当に大切な教えは、誰にでも、どんな状況でも伝えようとするものです。たとえ相手が理解を示さなくても、その人の成長を願う誠実な心があれば、語りかけ続けることに意味があります。先生が老学者たちとの意見の相違に憂いながらも、彼らを見捨てなかったのは、まさにその「仁の心」の表れでしょう。自分の言葉がすぐに届かなくても、諦めずに伝え続ける姿勢は、やがて周囲の心を動かし、道を開く力となるはずです。
この章句が説くこと
此道坦如道路世儒往往自加荒塞誠実さ率先垂範
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