伝習録 / 教約
凡歌詩,須要整容定氣,清朗其聲音,均審其節調,毋躁而急,毋蕩而囂,毋餒而懾,久則精神宣暢,心氣和平矣。每學量童生多寡,分為四班。每日輪一班歌詩,其餘皆就席斂容肅聽,每五日,則總四班遞歌於本學。每朔望,集各學會歌於書院。
新字:凡歌詩,須要整容定気,清朗其声音,均審其節調,毋躁而急,毋蕩而囂,毋餒而懾,久則精神宣暢,心気和平矣。毎学量童生多寡,分為四班。毎日輪一班歌詩,其余皆就席斂容粛聴,毎五日,則総四班逓歌於本学。毎朔望,集各学会歌於書院。
書き下し
凡そ歌詩は、須らく容を整え気を定め、其の声音を清朗にし、其の節調を均審にし、躁にして急なる毋く、蕩にして囂しき毋く、餒えて懾(おそ)るる毋かるべし。久しければ則ち精神は宣暢し、心気は和平ならん。学ごとに童生の多寡を量り、分ちて四班と為す。毎日、一班を輪して詩を歌わしめ、其の余は皆な席に就きて容を斂め粛聴す。五日毎に、則ち四班を総べて本学に遞歌す。朔望毎に、各学を集めて書院に会歌す。
現代語訳
詩を歌うには、姿を整え気を定め、声を清らかに明るくし、節回しを均整にし、せかせかと急がず、乱れて騒がしくせず、萎えて怯えないようにする。長く続ければ、精神は伸びやかになり、心気は和らぐ。学校ごとに生徒の数を量って四班に分ける。毎日一班が順に詩を歌い、他は席に着いて姿勢を正して聴く。五日ごとに四班をまとめて学校で順に歌う。一日と十五日には、各学校を集めて書院で合同で歌う。
解説
歌を歌うという行為一つにも、その姿勢や心の状態が深く関わっています。この一節は、声を清らかに、節回しを均整に、そして焦らず、騒がず、怯えないように歌うことを求めます。これは単に歌が上手くなるためだけでなく、長く続けることで精神が伸びやかになり、心が穏やかになるという効果を期待しているのです。身体の動きや声の出し方といった外側の形を整えることが、内側の心の状態にも良い影響を与えることを示唆しています。日々の行動に丁寧さを持つことで、心も整っていくでしょう。
この章句が説くこと
久則精神宣暢心気和平矣信頼
関連する章句
-
論語・憲問篇子曰く、『詐を逆(むか)えず、不信を億(はか)らず。抑も亦た先覚なる者、是れ賢か。』
-
言志四録・南洲手抄信上下に孚す、天下甚だ処し難き事無し。
-
史記 魯仲連鄒陽列伝鄒陽は、斉人なり。梁に游び、故の呉人荘忌夫子・淮陰の枚生の徒と交はる。書を上りて羊勝・公孫詭の間に介す。勝等鄒陽を嫉み、之を梁の孝王に悪す。孝王怒り、之を吏に下し、将に之を殺さんと欲す。鄒陽客游して、讒を以て禽へらる。死して負累せんことを恐れ、乃ち獄中より書を上りて曰く、臣聞く、忠は報いられざる無く、信は疑はれずと。臣常に以て然りと為せしも、徒だ虚語のみ。昔者、荊軻は燕丹の義を慕ひ、白虹日を貫くも、太子之を畏る。衛先生は秦の為に長平の事を画し、太白昴を蝕すも、昭王之を疑ふ。夫れ精は天地を変ずるも、信は両主に喩らず。豈に哀しからずや。今、臣忠を尽くし誠を竭くし、議を畢くして知られんことを願ふも、左右明らかならず、卒に吏の訊に従ひ、世の疑ふ所と為る。是れ荊軻・衛先生をして復た起たしむるも、燕・秦悟らざるなり。願はくは大王孰く之を察せよ。昔、卞和宝を献じて、楚王之を刖る。李斯忠を竭くして、胡亥極刑にす。是を以て箕子は詳り狂ひ、接輿は世を辟く。此の患に遭はんことを恐るればなり。願はくは大王、卞和・李斯の意を孰察して、楚王・胡亥の聴を後にし、臣をして箕子・接輿の笑ふ所と為らしむる無かれ。臣聞く、比干は心を剖かれ、子胥は鴟夷せらると。臣始め信ぜざりしも、乃ち今之を知る。願はくは大王孰察して、少しく憐れみを加へよ。諺に曰く、「白頭にして新たなるが如き有り、傾蓋にして故きが如し」と。何となれば、知ると知らざるとなり。故に昔、樊於期は秦を逃れて燕に之き、首を荊軻に藉して以て丹の事を奉ず。王奢は斉を去りて魏に之き、城に臨みて自剄し、以て斉を卻けて魏を存す。夫れ王奢・樊於期は、斉・秦に新たにして燕・魏に故きに非ざるなり。二国を去りて両君に死する所以の者は、行ひ志に合ひて義を慕ふこと窮まり無ければなり。是を以て蘇秦は天下に信ぜられざるも、燕の為に尾生たり。白圭は戦ひて六城を亡ふも、魏の為に中山を取る。何となれば、誠に以て相知る有ればなり。
-
『酔古堂剣掃』集醒・易く信ずる者は必ず易く疑ふ輕く與ふる者は必ず濫りに取り、易く信ずる者は必ず易く疑ふ。
-
史記 范雎蔡沢列伝卒に范睢の謀を聴き、五大夫綰をして魏を伐たしめ、懐を抜く。後二歳、邢丘を抜く。客卿范睢また昭王に説きて曰く、「秦・韓の地形は、相錯はること繡の如し。秦の韓有るや、譬へば木の蠹有るが如く、人の心腹の病有るがごときなり。天下変無くんば則ち已む、天下変有らば、その秦の患ひと為る者、孰か韓より大ならんや。王は韓を収むるに如かず」と。昭王曰く、「吾固より韓を収めんと欲す、韓聴かず、これを為すこと柰何」と。対へて曰く、「韓安んぞ聴くこと無きを得んや。王、兵を下して滎陽を攻めば、則ち鞏・成皋の道通ぜず。北のかた太行の道を断たば、則ち上党の師下らず。王一たび兵を興して滎陽を攻めば、則ちその国断たれて三と為らん。夫れ韓は必ず亡ぶるを見ば、安んぞ聴かざるを得んや。若し韓聴かば、而して霸事因りて慮るべし」と。王曰く、「善し」と。且に使ひを韓に発せんとす。范睢日に益々親しまれ、また説きて用ひらるること数年、因りて閒を請ひて説きて曰く、「臣山東に居りし時、斉の田文有るを聞きて、その王有るを聞かず。
-
言志四録・南洲手抄信を人に取るは難し。人は口を信ぜずして躬を信ず。躬を信ぜずして心を信ず。是を以て難し。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る