伝習録 / 教約
每日清晨,諸生參揖畢,教讀以次,偏詢諸生,在家所以愛親敬畏之心,得無懈忽未能真切否?溫凊定省之儀,得無虧缺未能實踐否?往來街衢步趨禮節,得無放蕩未能謹飭否?一應言行心術,得無欺妄非僻未能忠信篤敬否?諸童子務要各以實對,有則改之,無則加勉。教讀復隨時就事,曲加誨諭開發,然後各退就席肄業。
新字:毎日清晨,諸生参揖畢,教読以次,偏詢諸生,在家所以愛親敬畏之心,得無懈忽未能真切否?温凊定省之儀,得無虧欠未能実践否?往来街衢歩趨礼節,得無放蕩未能謹飭否?一応言行心術,得無欺妄非僻未能忠信篤敬否?諸童子務要各以実対,有則改之,無則加勉。教読復随時就事,曲加誨諭開発,然後各退就席肄業。
書き下し
毎日、清晨、諸生、参揖し畢(お)われば、教読は次を以て、偏(あまね)く諸生に詢う。家に在りて親を愛し畏を敬する所以の心、懈忽にして未だ真切なる能わざる無きや否や。温凊定省の儀、虧缺して未だ実践する能わざる無きや否や。街衢を往来し歩趨する礼節、放蕩にして未だ謹飭なる能わざる無きや否や。一切の言行心術、欺妄非僻にして未だ忠信篤敬なる能わざる無きや否や。諸々の童子は務めて各々実を以て対うるを要す。有らば則ち之を改め、無くんば則ち勉を加えよ。教読は復た時に随い事に就きて、曲(つぶ)さに誨諭開発を加え、然る後に各々退きて席に就き業を肄(なら)う。
現代語訳
毎日、早朝、生徒たちが挨拶を終えたら、教師は順に一人ひとりに尋ねる。家で親を愛し敬う心が、怠って真剣でなくなっていないか。朝夕の安否伺いの作法が、欠けて実践できていないことはないか。街を歩く時の礼節が、だらけて慎みを欠いていないか。すべての言動と心の働きが、偽り邪になって、忠信篤敬でなくなっていないか。子どもたちは、それぞれ正直に答えること。あれば改め、なければ努めよ。教師はまた時と事に応じて詳しく諭し導き、その後で各々席に着いて学業に励む。
解説
学問や仕事の成果だけでなく、日々の生活における振る舞いや心の持ちようこそが、その人の土台を築きます。この一節は、授業の前に、家庭での親への敬愛や街での礼節といった、ごく身近な実践を問い直すことから始めるべきだと説きます。どんなに知識やスキルがあっても、基本的な人間性が伴わなければ、真の成長には繋がりません。日々の小さな言動に意識を向け、自分自身の「足元」を常に点検する習慣を持つことが大切です。
この章句が説くこと
諸童子務要各以実対有則改之無則加勉