伝習録 / 陸澄録
問孟子言「執中無權猶執一」。先生曰:「中只有天理,只是易。隨時變易,如何執得?須是因時制宜,難預先定一個規矩在。如後世儒者,要將道理一一說得無罅漏,立定個格式,此正是執一。」
新字:問孟子言「執中無権猶執一」。先生曰:「中只有天理,只是易。随時変易,如何執得?須是因時制宜,難預先定一個規矩在。如後世儒者,要将道理一一説得無罅漏,立定個格式,此正是執一。」
書き下し
孟子の「中を執りて権無きは猶お一を執るがごとし」と言うを問う。先生曰く、「中は只だ天理有るのみ。只だ是れ易なり。時に随いて変易す。如何ぞ執り得ん。須らく是れ時に因りて宜しきを制すべし。預め先に一個の規矩を定め在くこと難し。後世の儒者の如きは、道理を将(もっ)て一一に説き得て罅漏(かろう)無からしめ、個の格式を立定せんことを要す。此れ正に是れ一を執るなり」と。
現代語訳
孟子の「中を執っても権がなければ、一を執るのと同じだ」という言葉について尋ねた。先生は言った。「中とは天理だけだ。それは易だ。時に随って変わる。どうして執り持てよう。時に応じて適切さを定めるべきだ。あらかじめ規矩を定めておくことはできない。後世の儒者は、道理を一つ一つ説いて漏れなく、決まった型を立てようとする。これこそ一を執ることだ」。
解説
「中」は、固定した中間点ではありません。時とともに動く。だから、あらかじめ決めておけない。ところが後の儒者は、漏れのない型を作ろうとする。「これこそ一を執ることだ」。完璧な規則集を作ろうとする努力が、かえって硬直を生むのです。
この章句が説くこと
中只有天理只是易随時変易如何執得立定個格式此正是執一