伝習録 / 陸澄録
問:「孔子謂武王未盡善,恐亦有不滿意?」先生曰:「在武王自合如此。」曰:「使文王未沒,畢竟如何?」曰:「文王在時,天下三分已有其二。若到武王伐商之時,文王若在,或者不致興兵,必然這一分亦來歸了。文王只善處紂,使不得縱惡而已。」
新字:問:「孔子謂武王未尽善,恐亦有不満意?」先生曰:「在武王自合如此。」曰:「使文王未没,畢竟如何?」曰:「文王在時,天下三分已有其二。若到武王伐商之時,文王若在,或者不致興兵,必然這一分亦来歸了。文王只善処紂,使不得縦悪而已。」
書き下し
問う、「孔子は武王を未だ善を尽くさずと謂う。恐らくは亦た満意ならざる有るか」と。先生曰く、「武王に在りては自ら此くの如くに合す」と。曰く、「文王をして未だ没せざらしめば、畢竟、如何」と。曰く、「文王在りし時、天下は三分して已に其の二を有つ。若し武王の商を伐つの時に到りて、文王若し在らば、或いは兵を興すに致さず、必然、這の一分も亦た来たり帰せん。文王は只だ善く紂に処し、悪を縦にするを得ざらしむるのみ」と。
現代語訳
尋ねた。「孔子は武王を『善を尽くしていない』と言いました。不満があったのでしょうか」。先生は言った。「武王としては、そうするしかなかった」。「もし文王が生きていたら、どうなったでしょう」。先生は言った。「文王がいた時、天下の三分の二はすでに手中にあった。武王が殷を討つ時に文王が生きていたら、兵を挙げるには至らず、残りの一分も帰服しただろう。文王はただ紂によく対処し、悪を放縦にさせなかっただけだ」。
解説
武王は討伐した。文王なら、討たずに済ませただろう、と。同じ目的を、戦わずに達する。「悪を放縦にさせなかっただけ」。追い詰めず、放置もしない。この匙加減が、戦いを不要にするのです。
この章句が説くこと
文王只善処紂使不得縦悪而已