伝習録 / 陸澄録
或問:「晦庵先生曰:『人之所以為學者,心與理而已。』,此語如何?」曰:「心即性,性即理,下一『與』字,恐未免為二。此在學者善觀之。」
新字:或問:「晦庵先生曰:『人之所以為學者,心与理而已。』,此語如何?」曰:「心即性,性即理,下一『与』字,恐未免為二。此在學者善観之。」
書き下し
或るひと問う、「晦庵先生曰く、『人の学を為す所以の者は、心と理とのみ』と。此の語は如何」と。曰く、「心は即ち性、性は即ち理なり。一の『与(と)』の字を下せば、恐らくは二と為るを免れず。此れ学者の善く之を観るに在り」と。
現代語訳
ある人が尋ねた。「朱子は『人が学問をするのは、心と理だけだ』と言いました。この言葉はどうですか」。先生は言った。「心が性であり、性が理だ。『と』という一字を入れれば、二つになってしまう。学ぶ者は、よく見るべきだ」。
解説
「心と理」。この「と」の一字を、王陽明は問題にします。「と」で結べば、二つのものになる。しかし心が理なのだから、結ぶ必要はない。一字の助詞が、思想全体を変える。言葉の使い方に、立場が現れるのです。
この章句が説くこと
心即性性即理下一与字恐未免為二