中庸
《詩》曰:「衣錦尚絅」,惡其文之著也。故君子之道,闇然而日章;小人之道,的然而日亡。君子之道:淡而不厭,簡而文,溫而理,知遠之近,知風之自,知微之顯,可與入德矣。
新字:《詩》曰:「衣錦尚絅」,悪其文之著也。故君子之道,闇然而日章;小人之道,的然而日亡。君子之道:淡而不厭,簡而文,温而理,知遠之近,知風之自,知微之顕,可与入徳矣。
書き下し
詩に曰く、『錦を衣(き)て絅(けい)を尚(くわ)う』と。其の文(あや)の著(あら)わるるを悪(にく)むなり。故に君子の道は、闇然(あんぜん)として而も日に章(あき)らかなり。小人の道は、的然(てきぜん)として而も日に亡ぶ。君子の道は、淡くして厭(いと)われず、簡にして文(あや)あり、温にして理あり。遠きの近きを知り、風の自(よ)る所を知り、微の顕なるを知らば、与(とも)に徳に入るべし。
現代語訳
『詩経』に「錦の衣を着て、その上に薄い上着を重ねる」とある。錦の美しい模様が、あからさまに目立つのを嫌ってのことである。だから君子の道は、一見地味で目立たないようでいて、日ごとにその輝きが明らかになっていく。つまらない人間の道は、初めは派手にきらきらと目立つが、日ごとに色あせて消えていく。君子の道は、淡々としているが飽きられず、簡素であるが趣があり、温かでありながら筋が通っている。遠くにあるものの根が近くにあることを知り、風がどこから吹いてくるかを知り、かすかなものがやがてはっきり現れることを知る。それが分かれば、ともに徳の道に入っていくことができる。
解説
派手さと本物を対比した、美しい一段です。錦を着ても、その上に薄い上着を重ねて隠す。本当に良いものを持っている人ほど、それを見せびらかさない。だから君子は最初は地味に見えるのに、日を追うごとに輝きが増していく。逆に小人は初めが最も派手で、あとは色あせるだけです。この差は時間が経つほど開きます。「淡而不厭(淡くして厭われず)」も味わい深い言葉です。濃い味は最初こそ強烈ですが、すぐに飽きられる。淡い味は長く付き合える。人も同じで、印象の強さで勝負する人より、静かに信頼される人のほうが結局長く続きます。急がず、目立たず、しかし止まらないこと。それが本物の道です。