中庸
唯天下至誠,為能經綸天下之大經,立天下之大本,知天地之化育。夫焉有所倚?肫肫其仁!淵淵其淵!浩浩其天!苟不固聰明聖知達天德者,其孰能知之?
新字:唯天下至誠,為能経綸天下之大経,立天下之大本,知天地之化育。夫焉有所倚?肫肫其仁!淵淵其淵!浩浩其天!苟不固聰明聖知達天徳者,其孰能知之?
書き下し
唯だ天下の至誠のみ、能く天下の大経を経綸(けいりん)し、天下の大本を立て、天地の化育を知ると為す。夫れ焉(いずく)んぞ倚(よ)る所有らんや。肫肫(じゅんじゅん)たる其の仁、淵淵(えんえん)たる其の淵、浩浩(こうこう)たる其の天。苟(いやしく)も固(まこと)に聡明聖知にして天徳に達する者に非ざれば、其れ孰(たれ)か能く之を知らんや。
現代語訳
ただ天下の至誠だけが、天下の大いなる筋道を織り上げて整え、天下の大いなる根本を打ち立て、天地が万物を育てるはたらきを知ることができる。そのような人が、いったい何かに寄りかかる必要があろうか。ねんごろで真心に満ちた、その仁。深く静かに湛えられた、その淵。広く果てしない、その天。もし本当に聡明で深い知恵を持ち、天の徳に到達した者でなければ、いったい誰がこの境地を理解できるだろうか。
解説
至誠の到達点を、詩のような三つの短い句で讃えた一段です。「肫肫たる其の仁、淵淵たる其の淵、浩浩たる其の天」。真心の厚さ、内面の深さ、境地の広さが、畳みかけるように歌われます。ここで印象的なのは「夫れ焉んぞ倚る所有らんや」という一句です。至誠の人は、何かに寄りかからない。権威にも、後ろ盾にも、肩書きにも依存しない。自分自身が根拠になっているからです。誰かの承認や、外からの評価に寄りかかっている限り、判断は揺れ続けます。逆に、自分の誠に立てる人は、誰が見ていようといまいと同じ判断ができる。組織の中で本当に頼りになるのは、そういう人です。