呂氏春秋 / 審時⑤
得時之麻,必芒以長,疏節而色陽,小本而莖堅,厚枲以均,後熟多榮,日夜分復生;如此者不蝗。
新字:得時之麻,必芒以長,疏節而色陽,小本而茎堅,厚枲以均,後熟多栄,日夜分復生;如此者不蝗。
書き下し
時を得るの麻は、必ず芒ありて以て長く、疏節にして色陽に、小本にして莖堅く、厚枲にして以て均し。後熟は榮多く、日夜分かれて復た生ず。此の如き者は蝗せず。
現代語訳
時機を得た麻は、必ず芒(のぎ)があって長く、節はまばらで色つやよく、根もとは小さいが茎は丈夫で、繊維(枲)が厚く均一である。遅れて熟すものは花(茂り)が多く、秋分を境にしてふたたび生育する。このようなものは蝗のような虫害を受けない。
解説
ここでは麻を例に、時機を得た場合の理想の姿が説かれます。時を得た麻は芒があって長く、節がまばらで色つやよく、茎が丈夫で繊維が厚く均一に取れ、虫害も受けないとされます。麻は衣料や縄の原料として古代の生活に欠かせず、その品質を左右する適期栽培が重視されました。これは農本思想における耕作の要諦、時を審らかにすることを、穀物だけでなく繊維作物にも及ぼしたものです。食料以外の作物についても、まき時と生育の関係を丁寧に観察して品質を語るこの記述は、農業を暮らし全体を支える営みとして総合的にとらえる、古代中国の実践的な農学の広がりを示しています。