呂氏春秋 / 愼小②
巨防容螻,而漂邑殺人;突洩一熛,而焚宮燒積;將失一令,而軍破身死;主過一言,而國殘名辱,為後世笑。
新字:巨防容螻,而漂邑殺人;突洩一熛,而焚宮焼積;将失一令,而軍破身死;主過一言,而国残名辱,為後世笑。
書き下し
巨防、螻を容るれば、而ち邑を漂よわし人を殺す。突、一熛を洩らせば、而ち宮を焚き積を燒く。將、一令を失えば、而ち軍破れ身死す。主、一言を過てば、而ち國殘われ名辱められ、後世の笑いと為る。
現代語訳
大きな堤防も螻(けら)を容れる小さな穴があれば、村を水浸しにし人を殺す。煙突が一つの火の粉を漏らせば、宮殿を焼き積み上げた物を焼く。将軍が一つの命令を誤れば、軍は破れ身は死ぬ。君主が一言を誤れば、国は損なわれ名は辱められ、後世の笑いものとなる。
解説
この段は、小さな綻びが破滅的な結果を招く連鎖を、堤防・煙突・軍令・君主の一言という四つの例で畳みかけます。けらの穴一つが堤防を決壊させ村を沈め、火の粉一つが宮殿を焼くように、微小な過失が甚大な損害に拡大するのです。背景には、前段の「小を慎む」主題を承け、些細さを軽視する危うさを強調する意図があります。核心は、事の大小は結果の大小と比例せず、小さな原因が破局を生むという因果の非対称です。現代でも、一本のネジ、一行のコード、一言の失言が事故や信用失墜の引き金になる例は多く、リスク管理の基本と一致します。小さな異常を早期に潰す予防の思想として、極めて実践的な戒めです。