呂氏春秋 / 愼行①
行不可不孰。不孰,如赴深谿,雖悔無及。君子計行慮義,小人計行其利、乃不利。有知不利之利者,則可與言理矣。
新字:行不可不孰。不孰,如赴深谿,雖悔無及。君子計行慮義,小人計行其利、乃不利。有知不利之利者,則可与言理矣。
書き下し
行は孰せざる可からず。孰せざれば、深谿に赴くが如く、悔ゆと雖も及ぶ無し。君子は行を計りて義を慮り、小人は行を計りて利を其するも、乃ち利ならず。不利の利を知る者有れば、則ち與に理を言う可し。
現代語訳
行いはよく熟慮しなければならない。熟慮しなければ、深い谷底へ落ちてゆくようなもので、後悔しても取り返しがつかない。君子は行動を計るときに義にかなうかを考えるが、小人は行動を計るときに利益を目当てにする。しかしかえって利益にはならない。利益にならないことこそが真の利益だと知る者となら、道理を語り合うことができる。
解説
行動する前によく熟慮することの大切さを説く一段です。深い谷に落ちれば後悔しても手遅れになるように、軽率な行動は取り返しがつきません。君子は義にかなうかを基準に行動し、小人は目先の利益を追いますが、それはかえって利を失うと戒めます。戦国期の呂氏春秋は、乱世で身を滅ぼす人々を数多く見てきた立場から、目先の損得ではなく義を判断基準とすることを重んじました。目の前の利を捨てることが結果的に真の利になるという逆説は、短期的な成果に流されがちな現代の意思決定にも通じ、長い目で信頼と評価を築く姿勢の重要さを教えてくれます。