呂氏春秋 / 恃君③
非濱之東,夷、穢之鄉,大解、陵魚、其、鹿野、搖山、揚島、大人之居,多無君;揚、漢之南,百越之際,敝凱諸、夫風、餘靡之地,縛婁、陽禺、驩兜之國,多無君;氐、羌、呼唐、離水之西,僰人、野人、篇笮之川,舟人、送龍、突人之鄉,多無君;鴈門之北,鷹隼、所鷙、須窺之國,饕餮、窮奇之地,叔逆之所,儋耳之居,多無君;此四方之無君者也。其民麋鹿禽獸,少者使長,長者畏壯,有力者賢,暴傲者尊,日夜相殘,無時休息,以盡其類。聖人深見此患也,故為天下長慮,莫如置天子也;為一國長慮,莫如置君也。置君非以阿君也,置天子非以阿天子也,置官長非以阿官長也。德衰世亂,然後天子利天下,國君利國,官長利官,此國所以遞興遞廢也,亂難之所以時作也。故忠臣廉士,內之則諫其君之過也,外之則死人臣之義也。
新字:非浜之東,夷、穢之鄉,大解、陵魚、其、鹿野、揺山、揚島、大人之居,多無君;揚、漢之南,百越之際,敝凱諸、夫風、余靡之地,縛婁、陽禺、驩兜之国,多無君;氐、羌、呼唐、離水之西,僰人、野人、篇笮之川,舟人、送竜、突人之鄉,多無君;鴈門之北,鷹隼、所鷙、須窺之国,饕餮、窮奇之地,叔逆之所,儋耳之居,多無君;此四方之無君者也。其民麋鹿禽獣,少者使長,長者畏壮,有力者賢,暴傲者尊,日夜相残,無時休息,以尽其類。聖人深見此患也,故為天下長慮,莫如置天子也;為一国長慮,莫如置君也。置君非以阿君也,置天子非以阿天子也,置官長非以阿官長也。徳衰世乱,然後天子利天下,国君利国,官長利官,此国所以逓興逓廃也,乱難之所以時作也。故忠臣廉士,內之則諫其君之過也,外之則死人臣之義也。
書き下し
非濱の東、夷・穢の鄉、大解・陵魚・其・鹿野・搖山・揚島・大人の居、多く君無し。揚・漢の南、百越の際,敝凱諸・夫風・餘靡の地、縛婁・陽禺・驩兜の國、多く君無し。氐・羌・呼唐・離水の西、僰人・野人、篇笮の川、舟人・送龍・突人の鄉、多く君無し。鴈門の北、鷹隼・所鷙・須窺の國、饕餮・窮奇の地、叔逆の所・儋耳の居、多く君無し。此れ四方の君無き者なり。其の民は麋鹿禽獸のごとく、少者、長を使い、長者、壯を畏れ、力有る者は賢り、暴傲なる者は尊ばれ、日夜相殘い、時として休息すること無く、以て其の類を盡くす。聖人深く此の患を見る。故に天下の長慮を為すに、天子を置くに如くは莫し、と。一國の長慮を為すに、君を置くに如くは莫し、と。君を置くは、以て君に阿るに非ざるなり。天子を置くは、以て天子に阿るに非ざるなり。官長を置くは、以て官長に阿るに非ざるなり。德衰え世亂れ、然る後天子、天下を利とし、國君、國を利とし、官長、官を利とす。此れ國の遞に興こり遞に廢する所以なり。亂難の時に作る所以なり。故に忠臣廉士、之を內にしては則ち其君の過ちを諫め、之を外にしては則ち人臣の義に死するなり。
現代語訳
濱の東、夷・穢の地方、大解・陵魚などの土地や大人の住むところには、多く君主がいない。揚水・漢水の南、百越のあたりの地や国々にも、多く君主がいない。氐・羌など離水の西、僰人・野人らの川や郷にも、多く君主がいない。雁門の北、鷹隼・饕餮・窮奇などの地や儋耳の住むところにも、多く君主がいない。これが四方の君主なき者たちである。その民は鹿や鳥獣のようで、若者が年長者を使い、年長者は屈強な者を畏れ、力ある者が優れ、乱暴傲慢な者が尊ばれ、日夜殺し合い、休むことなく、同類を滅ぼし尽くす。聖人はこの災いを深く見た。だから天下のために遠く謀るには天子を置くにこしたことはなく、一国のためには君を置くにこしたことはない。君を置くのは君におもねるためではなく、天子を置くのも天子に、官長を置くのも官長におもねるためではない。徳が衰え世が乱れると、天子は天下を私利とし、国君は国を、官長は官を私利とする。これが国が交互に興り廃れ、乱難が時に起こる理由である。だから忠臣・廉士は、内にあってはその君の過ちを諫め、外にあっては臣としての義に殉ずるのだ。