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呂氏春秋 / 爲欲③

執一者至貴也。至貴者無敵。聖王託於無敵,故民命敵焉。群狗相與居,皆靜無爭,投以炙雞,則相與爭矣,或折其骨,或絕其筋,爭術存也。爭術存因爭,不爭之術存因不爭。取爭之術而相與爭,萬國無一。

新字:執一者至貴也。至貴者無敵。聖王託於無敵,故民命敵焉。群狗相与居,皆静無争,投以炙雞,則相与争矣,或折其骨,或絶其筋,争術存也。争術存因争,不争之術存因不争。取争之術而相与争,万国無一。

書き下し

一を執る者は至貴なり。至貴なる者は敵無し。聖王は無敵に託す。故に民命敵す。群狗相與に居り、皆靜かにして争うこと無し。投ずるに炙雞を以てすれば、則ち相與に爭う。或いは其の骨を折り、或いは其の筋を絶つは、爭術存すればなり。爭術存すれば因りて爭い、爭わざるの術存すれば因りて爭わず。爭うの術を取りて、相與に爭わざるは、萬國に一も無し。

現代語訳

一なる根本を執り守る者は、この上なく貴い。この上なく貴い者には敵がない。聖王は無敵の境地に身を託す。だから民は命を捧げて力を尽くす。群れをなす犬たちがともにいると、みな静かで争わない。だが炙った鶏肉を投げ与えれば、たちまち互いに奪い合い、あるものは骨を折り、あるものは筋を断つ。争いを引き起こす仕掛けがあるからだ。争いの仕掛けがあれば争い、争わせない仕掛けがあれば争わない。争いを生む仕掛けを用いておきながら、互いに争わずにいる、そんな国は万国に一つもない。

解説

この段は、争いも和も為政者の仕掛け次第で生まれると説きます。要点は、静かな犬の群れに肉を投げれば争奪が起きるように、争いは民の本性でなく、それを誘発する制度や条件がつくり出す、という洞察です。背景には、聖王が「一」という根本を守れば無敵となり民が心服するという理想があります。争術(争いを生む仕掛け)を用いながら平和を望むのは矛盾だと論じます。現代でも、組織内の対立は個人の資質より、競わせる仕組みや資源配分の設計が生み出すことが多いものです。争いの原因を仕組みに求め、環境を整える視点を教えてくれます。

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