呂氏春秋 / 用民④
當禹之時,天下萬國,至於湯而三千餘國,今無存者矣,皆不能用其民也。民之不用,賞罰不充也。湯、武因夏、商之民也,得所以用之也。管、商亦因齊、秦之民也,得所以用之也。民之用也有故,得其故,民無所不用。用民有紀有綱,壹引其紀,萬目皆起,壹引其綱,萬目皆張。為民紀綱者何也?欲也惡也。何欲何惡?欲榮利,惡辱害。辱害所以為罰充也,榮利所以為賞實也。賞罰皆有充實,則民無不用矣。
新字:当禹之時,天下万国,至於湯而三千余国,今無存者矣,皆不能用其民也。民之不用,賞罰不充也。湯、武因夏、商之民也,得所以用之也。管、商亦因斉、秦之民也,得所以用之也。民之用也有故,得其故,民無所不用。用民有紀有綱,壱引其紀,万目皆起,壱引其綱,万目皆張。為民紀綱者何也?欲也悪也。何欲何悪?欲栄利,悪辱害。辱害所以為罰充也,栄利所以為賞実也。賞罰皆有充実,則民無不用矣。
書き下し
禹の時に當りて、天下に萬國あり。湯に至りて三千餘國あり。今存する者無きは、皆其の民を用うること能わざればなり。民の用いられざるは、賞罰充たらざればなり。湯・武は夏・商の民に因れり。之を用うる所以を得たればなり。管・商も亦た齊・秦の民に因れり。之を用うる所以を得たればなり。民の用いらるるや故有り。其の故を得れば、民用いられざる所無し。民を用うるには紀有り、綱有り。壹たび其の紀を引けば、萬目皆起こり、壹たび其の綱を引けば、萬目皆張る。民の紀綱為る者は何ぞや。欲なり、惡なり。何をか欲し、何をか惡む。榮利を欲し、辱害を惡む。辱害は罰の充を為す所以なり。榮利は賞の實を為す所以なり。賞罰皆充實有れば、則ち民用いられざる無し。
現代語訳
禹の時代には天下に一万の国があり、湯の時代には三千余りの国があった。今それらが残っていないのは、みなその民を使えなかったからである。民が使えないのは、賞罰が実を伴わないからだ。湯王や武王は夏・殷の民をそのまま用いた。使う方法を得ていたからである。管仲や商鞅も斉・秦の民をそのまま用いた。同じく方法を得ていたからである。民が使えるようになるには理由がある。その理由をつかめば、民は使えないということがない。民を用いるには網の要となる大綱と細綱がある。ひとたび大綱を引けば無数の網目がみな起き、細綱を引けば網目がみな張る。民にとっての大綱・細綱とは何か。欲望と嫌悪である。何を欲し何を嫌うのか。栄誉と利益を欲し、屈辱と危害を嫌う。屈辱と危害は罰を実あるものにする手立てであり、栄誉と利益は賞を実あるものにする手立てである。賞罰がともに実質を備えていれば、民は使えないということがない。