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呂氏春秋 / 不廣③

鮑叔、管仲、召忽,三人相善,欲相與定齊國,以公子糾為必立。召忽曰:“吾三人者於齊國也,譬之若鼎之有足,去一焉則不成。且小白則必不立矣,不若三人佐公子糾也。”管仲曰:“不可。夫國人惡公子糾之母,以及公子糾;公子小白無母,而國人憐之。事未可知,不若令一人事公子小白。夫有齊國必此二公子也。”故令鮑叔傅公子小白,管子、召忽居公子糾所。公子糾外物則固難必。雖然,管子之慮近之矣。若是而猶不全也,其天邪,人事則盡之矣。

新字:鮑叔、管仲、召忽,三人相善,欲相与定斉国,以公子糾為必立。召忽曰:“吾三人者於斉国也,譬之若鼎之有足,去一焉則不成。且小白則必不立矣,不若三人佐公子糾也。”管仲曰:“不可。夫国人悪公子糾之母,以及公子糾;公子小白無母,而国人憐之。事未可知,不若令一人事公子小白。夫有斉国必此二公子也。”故令鮑叔傅公子小白,管子、召忽居公子糾所。公子糾外物則固難必。雖然,管子之慮近之矣。若是而猶不全也,其天邪,人事則尽之矣。

書き下し

鮑叔・管仲・召忽、三人相善し。相與に齊國を定めんことを欲し、公子糾を以て必ず立つと為す。召忽曰く、「吾が三人の者の齊國に於けるや、之を譬うれば鼎の足有るが若く、一を去れば則ち成らず。且つ小白は則ち必ず立たじ。三人、公子糾を佐くるに若かず。」管仲曰く、「不可なり。夫れ國人は公子糾の母を惡みて、以て公子糾に及ぼす。公子小白は母無くして、國人之を憐む。事未だ知る可からず。一人をして公子小白に事えしむるに若かず。夫れ齊國を有つは必ず此の二公子なり。」故に鮑叔をして公子小白に傅たらしめ、管子・召忽は公子糾の所に居る。外物は則ち固より必とし難し。然りと雖も、管子の慮ることは之に近し。是くの若くにして猶ほ全からざるは、其れ天か。人事は則ち之を盡くせり。

現代語訳

鮑叔・管仲・召忽の三人は仲がよく、ともに斉国を安定させようとし、公子糾が必ず君位につくと見込んでいた。召忽は「われら三人が斉国にとってあることは、鼎に三本の足があるようなもので、一本欠ければ立たない。しかも小白は必ず君位につけまい。三人で公子糾を輔けるのがよい」と言った。だが管仲は「それはよくない。国人は公子糾の母を憎み、その憎しみは公子糾にも及んでいる。公子小白は母がなく、国人は彼を憐れんでいる。事の成り行きはまだ分からない。一人を公子小白につけておくのがよい。斉国を保つのは必ずこの二公子のどちらかだ」と言った。そこで鮑叔を公子小白の傅役につけ、管仲と召忽は公子糾のもとに残った。外の巡り合わせは元より確実には見通せない。とはいえ管仲の思慮はほぼ的中していた。それでもなお万全にならなかったのは、天の巡り合わせだろうか。人としての務めは尽くしていた。

解説

管仲らが、どちらの公子が斉の君位につくか読み切れぬ中でリスクを分散した説話です。要点は、召忽が三人一致で公子糾に賭けようとしたのに対し、管仲が民心の動向を読んで、鮑叔を対立候補の小白につけて備えたという点にあります。結果、小白(後の桓公)が立ち、管仲はそこへ登用されました。外の巡り合わせは見通せなくとも、人としての備えは尽くしたわけです。不確実な将来に対して選択肢を一つに絞らず分散して備えるという発想は、リスクヘッジやシナリオ思考として現代の経営判断や意思決定にも通じます。

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