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呂氏春秋 / 順說④

管子得於魯,魯束縛而檻之,使役人載而送之齊,其謳歌而引。管子恐魯之止而殺己也,欲速至齊,因謂役人曰:“我為汝唱,汝為我和。”其所唱適宜走,役人不倦,而取道甚速,管子可謂能因矣。役人得其所欲,己亦得其所欲。以此術也,是用萬乘之國,其霸猶少,桓公則難與往也。

新字:管子得於魯,魯束縛而檻之,使役人載而送之斉,其謳歌而引。管子恐魯之止而殺己也,欲速至斉,因謂役人曰:“我為汝唱,汝為我和。”其所唱適宜走,役人不倦,而取道甚速,管子可謂能因矣。役人得其所欲,己亦得其所欲。以此術也,是用万乗之国,其覇猶少,桓公則難与往也。

書き下し

管子、魯に得らる。魯、束縛して之を檻し、役人をして載せて之を齊に送らしむ。其の謳歌して引くや、管子、魯の止めて己を殺さんことを恐れ、速やかに齊に至らんことを欲し、因りて役人に謂いて曰く、「我汝の為に唱せん。汝我が為に和せよ。」其の唱する所適に走るに宜し。役人倦まずして、道を取ること甚だ速し。管子は能く因れりと謂う可し。役人は其の欲する所を得、己も亦た其の欲する所を得たるは、此の術を以てなり。是れ萬乘の國に用う、其の霸たるは猶ほ少し、桓公は則ち與に往たり難ければなり。

現代語訳

管仲が魯に捕らえられた。魯は彼を縛って檻に入れ、人夫に車で斉へ護送させた。人夫たちが歌をうたいながらのんびり車を引くので、管仲は、魯が思い直して自分を殺しにくるのを恐れ、早く斉に着きたいと思い、人夫たちに「私が音頭を取るから、お前たちは合わせて歌え」と言った。その歌はちょうど足を速めるのに合っていて、人夫は疲れず、道を進むのがたいそう速くなった。管仲は相手にうまく因ったといえる。人夫は望みどおり楽しく歌え、管仲も望みどおり早く着けたのは、この術によるものである。この術を万乗の国に用いれば、覇者になるくらいでは物足りない。ただ桓公は器が小さく、ともに王業を成すには至らなかったのである。

解説

捕らわれの管仲が、護送の人夫を歌でうまく操って急がせた説話です。要点は、人夫が歌好きでのんびり引く様子を利用し、自分が音頭を取って足を速める歌を歌わせた点にあります。人夫は楽しく歌え、管仲は早く斉に着けるという、双方が望みを満たす形で相手に「因る」術の見本です。編者はこの術を国政に用いれば覇業さえ小さいと評しつつ、桓公はともに王業を成すには器が及ばなかったと結びます。相手の欲求を否定せずそれを満たしながら自分の目的も達する発想は、双方に利のある解を探る現代の交渉やマネジメントにも通じます。

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