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呂氏春秋 / 異用③

周文王使人抇池,得死人之骸,吏以聞於文王,文王曰:“更葬之。”吏曰:“此無主矣。”文王曰:“有天下者,天下之主也;有一國者,一國之主也。今我非其主也?”遂令吏以衣棺更葬之。天下聞之曰:“文王賢矣,澤及髊骨,又況於人乎?”或得寶以危其國,文王得杇骨以喻其意,故聖人於物也無不材。

新字:周文王使人抇池,得死人之骸,吏以聞於文王,文王曰:“更葬之。”吏曰:“此無主矣。”文王曰:“有天下者,天下之主也;有一国者,一国之主也。今我非其主也?”遂令吏以衣棺更葬之。天下聞之曰:“文王賢矣,沢及髊骨,又況於人乎?”或得宝以危其国,文王得杇骨以喻其意,故聖人於物也無不材。

書き下し

周の文王、人をして池を抇らしむるに、死人の骸を得たり。吏以て文王に聞す。文王曰く、「更めて之を葬れ。」吏曰く、「此れ主無し。」文王曰く、「天下を有つ者は、天下の主なり。一國を有つ者は、一國の主なり。今、我其の主に非ざるや。」遂に吏をして衣棺を以て更めて之を葬らしむ。天下之を聞きて曰く、「文王は賢なり、澤、髊骨にすら及べり。又況んや人に於てをや。」或いは寶を得て以て其の國を危うくし、文王は朽骨を得て以て其の意を喩せり。故に聖人の物に於けるや、材ならざる無し。

現代語訳

周の文王が人に池を掘らせたところ、死人の骨が出てきた。役人がこれを文王に報告した。文王は言った、「あらためて葬りなおせ」と。役人は「これには引き取り手がありません」と言った。文王は言った、「天下を保つ者は天下の主である。一国を保つ者は一国の主である。今、私がその(この死者の)主ではないというのか」と。そこで役人に命じて、衣服と棺を用いてあらためて葬らせた。天下の人々はこれを聞いて言った、「文王は賢明だ。恩恵は朽ちた骨にまで及ぶ。まして生きた人にはなおさらだ」と。ある者は宝を手に入れてかえって国を危うくするが、文王は朽ちた骨を手に入れてその心(の賢明さ)を世に示した。だから聖人にとって物は、用いようによって役立たぬものはない。

解説

文王が池から出た無縁の死骨を「天下の主たる自分が主だ」と言って手厚く葬りなおし、天下の人心を得た故事です。引き取り手のない朽骨さえ主君として弔う仁徳を示し、恩恵が死者にまで及ぶなら生者にはなおさらだと人々を感嘆させます。宝を得てかえって国を危うくする者がいる一方、文王は朽骨という無価値なものを用いて自らの徳を天下に示した、と対比されます。聖人にとって役立たぬ物はない、という異用篇の主題の結実です。現代でも、弱者や無縁の存在への配慮がかえって大きな信望を生むという逆説は、リーダーシップの本質を考える示唆となります。

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