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呂氏春秋 / 審己③

齊攻魯,求岑鼎,魯君載他鼎以往。齊侯弗信而反之,為非,使人告魯侯曰:“柳下季以為是,請因受之。”魯君請於柳下季,柳下季答曰:“君之賂,以欲岑鼎也?以免國也?臣亦有國於此,破臣之國以免君之國,此臣之所難也。”於是魯君乃以真岑鼎往也。且柳下季可謂此能說矣,非獨存己之國也,又能存魯君之國。

新字:斉攻魯,求岑鼎,魯君載他鼎以往。斉侯弗信而反之,為非,使人告魯侯曰:“柳下季以為是,請因受之。”魯君請於柳下季,柳下季答曰:“君之賂,以欲岑鼎也?以免国也?臣亦有国於此,破臣之国以免君之国,此臣之所難也。”於是魯君乃以真岑鼎往也。且柳下季可謂此能説矣,非独存己之国也,又能存魯君之国。

書き下し

齊、魯を攻め、岑鼎を求む。魯君他の鼎を載せて以て往かしむ。齊侯信ぜずして之を反して、非と為し、人をして魯侯に告げしめて曰く、「柳下季以て是と為さば、請う因りて之を受けん。」魯君、柳下季に請う。柳下季答えて曰く、「君の賂するに岑鼎を以てするや、以て國を免れしめんと欲するなり。臣も亦た此に國有り。臣の國を破りて、以て君の國を免れしむるは、此れ臣の難しとする所なり。」是に於て魯君乃ち真の岑鼎を以て往けり。且に柳下季は此を能く說けりと謂う可し。獨り己の國を存せしのみに非ざるなり。又能く魯君の國を存したり。

現代語訳

斉が魯を攻め、魯の宝である岑鼎を要求した。魯君は別の鼎を本物と偽って運ばせた。斉侯は信じずにそれを送り返し、偽物だとして、使者を魯侯に遣わして言わせた。「柳下季が本物だと言うなら、それによって受け取ろう」と。魯君は柳下季に頼んだ。柳下季は答えて言った。「殿がこの岑鼎を賄賂として差し出されるのは、国を戦禍から免れさせようとしてのことです。しかし私にもここに一つの国、すなわち守るべき信義があります。私の信義を破って、殿の国を戦禍から免れさせることは、私にはできかねることです」と。そこで魯君はやむなく本物の岑鼎を運ばせた。まさに柳下季はよく道理を説いたと言うべきである。ひとり自分の信義を守っただけではない。あわせて魯君の国をも救ったのである。

解説

魯の柳下季が、偽りに加担することを拒み、結果として国を救った「審己」の逸話です。要点は、柳下季が自らの「信義」を守り抜くことを、命じられた偽証より重んじた点、そしてそれが結局は国を救ったという逆説です。背景として、岑鼎は魯の家宝であり、斉は柳下季の言葉を信頼していました。彼が信義を守ったからこそ、その言葉に価値が生まれ、真の鼎を差し出すことで戦を回避できたのです。現代でも、目先の利のために信用を売らず、誠実さを守ることが、長期的には自分と組織を守るという教訓に通じます。

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