呂氏春秋 / 古樂①
樂所由來者尚也,必不可廢。有節有侈,有正有淫矣。賢者以昌,不肖者以亡。
新字:楽所由来者尚也,必不可廃。有節有侈,有正有淫矣。賢者以昌,不肖者以亡。
書き下し
樂の由來する所の者は尚しきなり。必ず廢す可からず。節有り侈有り、正有り淫有り。賢者は以て昌え、不肖者は以て亡ぶ。
現代語訳
音楽の由来は古く、決して廃してはならない。音楽には節度あるものと贅沢なもの、正しいものとみだらなものとがある。賢者はそれによって栄え、愚かな者はそれによって滅びる。
解説
古の聖王が定めた音楽の由来をたどる古樂篇の総論です。音楽は起源が古くけっして廃すべきものではないが、そこには節度あるものと贅沢なもの、正しいものとみだらなものの別があり、用いる者しだいで栄えも滅びもする、と説きます。前の侈樂篇が過剰な音楽を批判したのを受け、ここでは歴代の聖王が作った正しい音楽の系譜を語る導入となっています。音楽そのものを否定するのでも、無条件に称えるのでもなく、その質と使い方を問う姿勢が示されます。同じ道具や技術が、扱う人の見識によって益にも害にもなるという見方は、文化や技術一般のあり方を考えるうえでも古びない視点です。