呂氏春秋 / 去私③
堯有子十人,不與其子而授舜;舜有子九人,不與其子而授禹;至公也。
新字:堯有子十人,不与其子而授舜;舜有子九人,不与其子而授禹;至公也。
書き下し
堯に子十人有り、其の子に與えずして舜に授く。舜に子九人有り、其の子に與えずして禹に授く。至公なり。
現代語訳
堯には十人の子があったが、位をわが子に与えず、舜に授けた。舜には九人の子があったが、やはりわが子に与えず、禹に授けた。これこそ究極の公である。
解説
古代の聖王による位の禅譲を、公の極致として讃える段です。堯には十人、舜には九人の子がいたにもかかわらず、いずれも位をわが子に継がせず、最も有徳の人物に譲りました。血縁ではなく徳と能力によって後継者を選ぶ——これを「至公(この上ない公平)」と呼んでいます。人は誰しもわが子を可愛く思い、地位や財産を継がせたくなるものです。その最も強い私情を退けて公を貫いたからこそ、堯・舜は理想の君主とされました。ここには、後継者の選定こそ公私が最も鋭く問われる場面だという洞察があります。現代の事業承継や組織の後継問題にも通じ、身内か適材かの分かれ目で、私情を超えて最適の人を選べるか——リーダーの公平さが試される核心を突いた一段です。